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33婚約者の条件~伯爵夫人side②

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本来人を襲ったりはしないが、懐くなんてありえない。
私の時も敵意はなかったけど、海竜は気位が高く、自分から近づくなんてないのだけど。

サーシャ様は噂とはまるで違う令嬢だった。
竜は気位が高く欲深い生き物を嫌う。

演技だったらすぐにバレる。
人間が竜を御するなんて無理なのだから。


でもサーシャ様は竜と心を通わせている。
恐ろしい程に早すぎる。

これは天才とでもいうべきか。
私の目利きは間違っていなかったのだ。

初めて彼女を見た時に見えたのだ。
強い輝きを。

私は巫女の一族。
人の魂を判別できる。

穢れの無い水晶のような色をしている。
穢れの無い心を持ってなければ竜は心を許さないし、食べ物を差し出す行為は許さない。


一番驚いたのは、お婆様が勝手に邸の仕掛けを作動させ、私に黙って恐ろしい事を企てていた事だ。


「あの小娘は何者じゃ!」

グライアイ姉妹の次女グレイス婆様が魔力を失った状態で現れたのだ。


「何じゃ?老けたな」

「あの小娘は大魔女か!私の呪いを跳ね返したぞ。少し意地悪をしてやろうと呪いを仕掛けたが跳ね返されたぞ!なんじゃあの小娘は巫女か!それとも黒魔導師か!」


グライアイ姉妹の呪いを跳ね返すなんて魔導師でも無理だわ。
ある程度加減はしたとしても跳ね返すなんて。


「その後、海竜に噛みつかれたわ!」

「自業自得じゃな。人間相手に何をしておるんじゃ」

「少し悪戯をする程度じゃ」


悪戯で済まないわよ。
普通は。

でも、聖女の妹ならばかなり強い魔力を有している?
鑑定をしてもらっても魔力はほぼないと言われているのに妙だわ。


様々な憶測が浮かぶ。


「それで彼女をどう思われます」

「白だろう。頭の中を少し覗いたが馬鹿だな」

「竜の事ばかりじゃな。まぁ馬鹿すぎる故にまだ染まっていない」


社交界に出ないで田舎で過ごしていたからこそ余計な先入観がない。
それに感性が鋭いのも素晴らしいわ。


邸内のカラクリを全てクリアするなんて柔軟な考え方と遊び心をがある証拠。
それに我が家は社交界にはほとんど出ないから礼儀作法よりも領地で生きて行けるかが最優先。

しかも竜から認められている時点で十分すぎる程に資格があるわ。


「本当に良かった。思えば長い道のりだったわ」

これまで婚約者候補はいたけど、厳しい領地に耐えられない令嬢。
竜に睨まれて逃げ出す令嬢。


時にはお婆様を見て気絶する事もある。
中には敵対する派閥により送り込まれた令嬢が婚約を結んで我が家を乗っ取ろうとする愚か者もいたけど追い出されたわね。


けれどその所為で社交界では難攻不落だと言われ婚約者を探すのが難しくなったけど。


サーシャ様ならフレデリックと相性も良いのではないかしら?
この縁談は良縁だとも言えるわ。


フレデリックの行く末を王太子殿下も随分と心配してくださっていたしね。


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