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27姉の苛立ち~ジャネットside②

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嘘よ。
私以外に聖女候補が現れたなんてありえない!



異世界?
そんなのおとぎ話に過ぎないわ。


「あの…大丈夫ですか?」


「触らないで!」

「あっ…」


無礼にも私に触れようとしたその女の手を弾くと腕から血が流れる。


「何て無礼な!聖女様の前で血を流すとは」


私の傍仕えの侍女が告げる。
そうよ、私は侯爵令嬢でこの女は何の身分も持たない平民なのに私に触れようとした。



悪くない。


私は悪くないわ。



「何事だ!」

「殿下!」


騒ぎを聞きつけ現れたのはこの国の王太子殿下。


ルミエル殿下だった。


「殿下…」

「一体何の騒ぎ…マリア、どうしたんだ」


床に落ちる血を見て殿下はあの女が手から血を流しているのに気づく。


「殿下、この者は…」


殿下の前で血を見せるなんてなんて無礼なのかしら。
婚約者として、聖女として咎めなくてはならないわね!


「大丈夫か?これで…」

「いえっ‥そのような」

「気にしなくていい。直ぐに手当てを。誰か薬を持て」


「殿下!なりませんわ!」


あろうことにもあの女の手に触れ血をハンカチで抑えて止血している。



「殿下、血には穢れがこざいますのよ」

「ああ、血には様々な雑菌があるぐらいは知っている」


「そうではありません。穢れがあると言っているのです」


聖女である私は常にお清めをしている。
殿下も王宮にて瘴気に当てられないように清められているわ。

でもその女は違うでしょ?


「私を温室育ちの令息と一緒にしないでくれ。それにに穢れなどどうということでもない。それにマリアの何が汚れているというのだ」

「ですから!」


「もういい。話にならないな。マリア、私と一緒に来てくれ」

「ですが、この後の御公務が…」

「問題ない。前倒しで終わらせてある」


そう言いながら私に冷たい視線を向けながら去って行く殿下に手を伸ばすも、声が聞こえる。



「何ですのあれ…」


「殿下との関係はあまりよろしくないのかしら」

「ジャネット様って…冷たい方だったのね」



周りの者達が口々に言い放つ。
これまで私に媚びていたくせに手のひらを返したように。


聖女として大事にされて当然だった。
誰からも尊敬され愛される存在、それが聖女だったのに。


私の地位が傾きかけている。
そんな兆しを感じながら不安を消す様に私は耳を塞ぎながらその場を逃げるように去った。



どうしてこんな事に。


少し前までは完璧だった。


それなのに何故?


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