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20完璧な聖女~ジャネットside①
しおりを挟む私の名前はジャネット・リシュフェール。
名門貴族の長女として生を受け、三歳の頃に聖女の資格を有していると鑑定士から告げられた。
お祖母様から私は優れた選ばれた存在だと教えられて来た。
お祖母様は高貴な身分で元は王族だった。
お祖父様に見初められて侯爵家に嫁いた高潔の血筋を持っておられる。
私はそんなお祖母様の血を誰よりも引いている。
王侯貴族の中でも最も高潔な一族。
なのに私の妹は全てに劣っている。
美しい容姿も、学問も加護もない所為で社交界に出る事はない。
私は口を酸っぱくして何度もたしなめたのに聞く耳を持たず、お母様はサーシャを甘やかしている。
家庭教師の先生も紹介しても勉強に身が入らない。
こんなにも妹の事を考えているのに、お母様は解ってくださらない。
私の気持ちを解ってくださるのはお祖母様だった。
「ジャネット、貴女は他の令嬢とは違うのです。同じではなりません」
「はい」
「常に上を行き、お手本になるのです。貴女はいずれこの国の女王になるのですから」
我が国では歴代の聖女は王太子殿下の婚約者となっている。
私はいずれ王太子殿下の妃となる。
なのにお母様はまるで解っていない。
私は特別な存在なのに、そんじょそここらの貴族令嬢とは違う。
私は特別なのに。
「ジャネット、先日のお茶会で他の令嬢を皆の前で服装が地味だと言ったそうね」
「ええ、私が態々教えて差し上げたんです。あんなドレスで皆の前に出るなんて変だもの」
社交界の常識を正すのも私の勤め。
明らかに相応しくない恰好で公の場に出るなんて非常識だから皆の前で言ってあげたら泣き出して会場を出て行ってしまった。
「子爵家ではどんな教育をしているのかしら。あれでは社交界で爪はじきにされるわ。今度子爵夫人に注意を促しちゃんとした教師を…」
「ジャネット!貴女はなんて事を…」
「お前は何様だ。他所の令嬢に…その母君にまでそんな無礼を」
「無礼?親切心です。サーシャのような不良になったら困るでしょう?」
私は聖女になるんだから当然のことをしたまでだわ。
何故怒るの?
「私は聖女として高位貴族として社交界を引っ張らなくてはなりませんわ。第一、今の社交界を野放しにした夫人が不甲斐ないから…」
「ジャネット、なんて事を」
「そんな歪んだ考えを」
どうしてお父様もお母様も私を理解してくれないの?
私は聖女として皆を導く存在なのに、二人は何も理解しようとしなかった。
その原因は――。
「お父様、お母様?」
サーシャだったのだから。
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