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7お父様の思い

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婚約して一週間後の事。


「新しい先生?」

「ああ、今の家庭教師とは相性が良くないだろう」


夕食時の事だった。
今日は珍しくお父様も一緒に食事をする際に、新しい家庭教師の事でお話が合った。


「彼女は宮廷家庭教師、今まで宮廷貴族ばかり見て来たから貴女のように幼少期を領地で過ごした令嬢とは相性が良くないかもしれないわ」

「えっと…関係あるんですか?」


単に私の頭が悪いだけで、王都内の貴族令嬢は優秀だった。


「大ありなのよ。百姓貴族に辺境地の貧しい貴族などはその日その日の生活で精いっぱいで最低限の淑女教育しか受けていないわ…貴女の場合はジャネットの教育を最優先した所為よ」

「でも、それは私の覚えが遅いから」

「私はお前に悪いことをしたと思っている。誰にも得手不得手はある」


お父様はお姉様と私は違うのは明らかだったのに同じような教育をしてしまった事を詫びた。

「ジャネットは生まれつき才能がある。天才だ…だが、サーシャは優れて才を持っている」

「え?」

「お前は誰よりも人の心が解る子だ。天才には人の心は解らない。私は天才よりも人の痛みを理解し、多くの人の心の声に耳を傾けられるようになって欲しい」

「一人の絶対的な天才よりも複数の優秀な人間が奇跡を生み出す。小さな奇跡は大きな奇跡となる」


お父様はちゃんと私を見てくれていた。
社交界に出ることができない私でもできることがある。


「お前は貴族令嬢としてはまだまだだが…そんな事どうでもいい」

「はい…」

「社交界に出るだけが道ではない。だから今後は淑女教育と並行して学んで欲しい。フレデリック殿は竜騎士で国の国の防衛を担っている…その支えとなりなさい」

「承知しました」


私にできる事は少ない。
でもそれだけが私にできる事ならば…


「お前は幸せになっていいんだよ。王都はお前に狭すぎる。もっと広い空に出て見るんだ」

「お父様‥」

「お前は私の大事な娘だ。ジャネットもお前も同じぐらいに」


「サーシャ。私は貴女を誇りに思っているわ。ジャネットと貴女は違うのだから」


社交界には味方はいない。
私を忌み嫌う親族のいるけど、一人じゃない。


「春麗、頼んだぞ」

「はい…」


「サーシャを支えてくれ」


お姉様のようになる必要はない。
貴族令嬢として振舞えない私でもできることがある。


「モニーク家は代々竜族と共存する一族だ。竜に乗れば何時でも里帰りもできるだろう…くっ!」

「貴方…嫁ぎ先を選んだ一番の理由はそれですか」


お母様は冷たい目をする。
理由って何だろう?


「仕方ないだろう!可愛い娘を手元に置いておきたくて何が悪いんだ」


「はぁー…」


お父様は私を他所に嫁がせるのは苦渋の選択だったらしく。
モニーク領地から飛竜を使えすぐに領地にも王都にも来れるという理由も強かったらしい。


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