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番外編第三章元伯爵騎士の現在
3.死神と呼ばれた男
しおりを挟むアリスティア様とは似ても似つかない男。
死神と呼ばれるこの男は、私にとっても忌むべ存在だった。
「田舎貴族で名ばかりの騎士がやることが随分だな。恐れ入るよ」
「何の事だか」
「私は君が滑稽だと思ってね」
私が?
何を言っているんだこの男は。
「所詮敵わない恋。一方的の狂った恋に過ぎない」
「狂っただと」
「ああ、そうだ。貴方がどうあがいても所詮は従者と姫君では立場が違う…あの馬鹿王子は真実の愛などと現を抜かしているが…勘違いの恋などいずれ覚める。強い絆の前には」
「侮辱する気か」
「おや、怒ったか?真実を親切に教えただけだと言うのに」
白々しい男だ。
ティエゴ様を馬鹿だと堂々と言って、そして私をも侮辱している。
「例え彼女がティエゴ殿下と婚約が白紙になっても貴方と婚約等私が許さない。格下の汚らわしい血を入れるなどありえん…特にお前のような野良犬など論外だ」
「私が野良犬だと?」
「ああ、そうだ」
何たる侮辱を。
私は王弟殿下であるジュデッカ様の甥に当たるのだぞ!
「名前だけの王家の血縁者。高貴さとは血筋ではない。あの方は高貴さを持っておられる」
「馬鹿な、逃げ出したんだ」
「いいや、戻って来られるさ。あの方はティアを取り戻されるべくここに戻って来られる。ハイエナ共がどんな卑怯な手を使おうとな」
「貴様!」
私達をハイエナ扱いをする気か!
「図星か?これは預言じゃない。真実だ…神ですら会二人の絆を断ち切れることはないだろう。どんなに策略を巡らせても無駄だ…ティアの心はあの方の物」
「黙れ!」
そんなはずはない。
王都から追放されたあの男が再び戻るなどありえないのだ。
そうすべては――。
****
「何をサボっている!」
冷たい水をかけられ肌には針で刺されたような痛みが走った。
「早く働け!」
「くっ…」
「言われたこともできないのか。本当に無能な男だ」
私を見下す男を睨むも、傍にいる監視が鞭で叩く。
「無礼者!何という目で見ているんだ!」
「良い、気にしていない」
「ハッ!」
俺に情けをかけるようだが、本当は心の中で嘲笑っているのだろう。
「労働が足りないようだから、もっと増やした方が良い。無心になって働かせるにはそうだな…土木作業よりも坊作業がいいかもしれないな」
「かしこまりました」
「なっ・・・」
ひたすら穴を掘る作業をさせられていた私はこの生活にうんざりしていた。
あの日裁判が終わった後に直ぐに隣国に連れていかれ拷問にかけられた後、この無人島に送られた。
そこで待っていたのは地獄だった。
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