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番外編第三章元伯爵騎士の現在

1.憎い世界

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この世界は憎しみでしかない。
私に相応しい世界ではなかった事を何度憎んだ事か。

この世に神などいるものか。



私は幼少期に病により痘痕ができて右目がほぼ使い物にならなくなった。
醜い右目に母は遠ざかり、父も腫物で触れるかのような扱いをして、孤独な日々を過ごして来た。

そんな折に叔父の王弟殿下の計らいにより王宮に向かう事になった。


そこで美しい一輪の花に出会った。


一目見た時から私はあの方に心を奪われていた。

王宮では身分の高い者に声をかけたり視線を向けるのは禁じられていた。

しかしうっかり視線が合った私にあの方は微笑みお辞儀をしてくださった。

幼いながらもあの方は私に微笑みを浮かべてくださったのだ。


きっと私にも友好的な感情を向けてくれていると思った。


もう一度あの方に会いたい!

そう思ったが――。


「早く来いティア!」

「待ってください!」

歌うような愛らしい声が響いたので私はその声のする方に向かうも。


「待ってジーク!」

私の麗しの花はあんな野蛮な者と!


「まったく遅いぞ。早くしないと剣術の稽古の時間が無くなる」


剣術だと?
あの麗しい方に剣など必要ある物か。


「見て、ジークベルト殿下よ」

「本当…侯爵令嬢とだなんて」


俺は柱に隠れ聞き耳を立てる。

「最近何時もご一緒におられるわね」

「いくら何でも無理だと言うのに」

「異国の王子と名家の侯爵家のご令嬢が婚約なんて無理でしょ」


侍女達の言葉を聞いて、黒い花が咲くようだった。

まるで美しく咲き誇る花が俺に囁く。

『あの男は邪魔だ。あってはならないと』


王家に嫁げるだけの血筋と身分を持つ美しい侯爵令嬢のアリスティア様。

対するあの男は異国の皇女の子供。
正当な王位継承者はティエゴ様に決まっている。

もしや、ティエゴ様から奪う気か?


なんという恥知らずな男だ。


第一、女性に剣は必要ない。


女性は男に守られていればいいんだ。


前に出る必要ないのだから。


アリスティア様も美しくあればいいというのに、事もあろうか。


その数日後最悪な事態が起きた。



「まったく王妃陛下にも困ったものだ」

「今さらあの王子とアルゼンテ侯爵令嬢を婚約させるなんて」


聞きたくない噂が私の耳に入ったのだった。
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