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番外編一章第一王子
7.目覚めた後
しおりを挟む毒に苦しんだ俺は意識が朦朧する中、何度も心が折れそうになった。
「殿下!気をしっかり!」
俺はこのまま死ぬのか?
嫌だ、ティアと一緒に生きてくと約束したのに。
約束したのに。
辛い日々が続き、ようやく毒が抜けたが現実はとても厳しく残酷だった。
「残念ですが、毒の解毒は難しく。障害が残るでしょう」
「そんな!何とかならないのですか」
俺の手を握りながら母上が嘆いていた。
多くの者が見舞う中、あの男が俺を見て笑った。
「お気の毒な殿下…これでは王都で生きていくのも大変でしょう。まずは療養された方が良いかと」
「おお、そうだな」
「ジュデッカ!」
叔父上の笑った表情。
「まさか茶器に毒とは…」
何故知っている?
俺はカップに口をつけたが、その場にいない者は知るはずがない。
何故!
まさか…。
まさか!
この二人が仕組んだのか?
証拠はないが妙な確信があった。
そして数日後俺が一人で起き上がられるようになったころ。
弟のティエゴが正式に王太子となる事を告げられた。
俺は王の座に執着していなかったからそこまで傷つかなかった。
だけど――。
「ジークベルト、アリスティア嬢との婚約は解消となりました」
「母上!」
「そして貴方を北の辺境地に送ることになりました」
そんな…。
あんまりだ。
「ティアとティエゴが婚約するのですか」
「聞いていたのですね。いいえ、既に噂を流す者がいるのでしょうね」
王宮内では噂となっている。
知りたくもないのにわざと俺の耳に入れる者だっているんだ。
「今の貴方では王都で生き抜く事もできません」
「母上…」
「その体では耐えられないでしょう。ですが…貴方に覚悟があるならば取り戻しなさい」
「取り戻す?」
何を言っているんだ?
今の俺には何もないというのに。
「欲しい物が…どうしても得たい物があるならば戦いなさい」
戦ってこの手に入る者なんて俺にはない。
だけど、こんな体ではどうにもならない。
毒の後遺症では。
騎士になる事もできない。
「母上…いいえ、王妃陛下」
「何です」
「許されるならお願いがございます」
俺の命が狙われた時点でティアにも危害が及ぶ。
「後生です。ティアを…ティアの命を、心を守ってください」
最後の我儘だった。
俺の事を知ればティアはきっと俺の後を追うだろう。
だが王太子殿下との婚約を簡単に断ればどうなるか。
ならばせめてティアは…。
「この王宮に安全な場所はありません。ですが彼女は必要な人です」
その言葉だけで十分だった。
きっと母上はティアを守ってくれると思った。
ティアが生きてくれれば俺は耐えられると思った。
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