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番外編一章第一王子

6.生死の境

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俺とティアの婚約は父上も両手を上げて喜ばれた。
政略結婚としてもこれ以上の良縁はないと母が押してくれた。

王家からすれば侯爵家が後ろ盾になる事は喜ばしい事らしい。


「おめでとうございますジークベルト様」

「ああ」


誰よりも喜んでくれたのはエデンだった。
表情は相変わらず変わらず不愛想だったが、喜んでくれているのが解る。


「アルデンテ侯爵家が後ろ盾になればジークベルト様の立太子は確実でしょう」

「おい…」

「これでゴミ虫共を血祭りにあげられます」


血の気の多い奴だな。
第一、俺はそんなつもりでティアと婚約したわけじゃない。

「ジークベルト様の御身をお守りする為にも必要な事です」

「うむ…」

解ってはいる。
未だに俺を汚い物のように見る叔父上は俺を認めていない。


「失礼いたします。ジークベルト様、アリスティア様がお見えです」

「もうそんな時間か。すぐに行く」

「かしこまりました」


約束の時間が過ぎていたとは思わなかった俺は急いで部屋を出ると、廊下にて誰かとぶつかった。


「無礼者!」

「良い、俺も前方不注意だった」


俺とぶつかった者を見ると片目を前髪で隠していた。


「悪いな。怪我はないか」

「申し訳ございません」

俺は手を差し伸べようとするも。


「手が汚れますので」

「そうか?俺は気にしな…」

「異国の汚れた血など触りたくもないのですよ」

「は?」

これまで陰でコソコソ言われることはあれど耳打ちされた言葉に驚く。

「どうやってあの方を騙したのか…流石女狐の子というべきか」

「お前!」

母上の事か。
隣国の皇女である母を侮辱するなど。



「殿下、どうなさいましたの」

「ティア」


「ご機嫌麗しゅうございます。アリスティア様」


俺を無視してティアに騎士としての挨拶をしキスをしようとしたが。


「キスは不要です。社交デビューをしていない私には…それに婚約者である殿下の前ですべきではありません」

「それは…ご無礼を」


笑いながらもこの男は俺を睨みつけていた。

何故そんな目で俺を見るんだ?

まるで汚い物を見る目で、ジュデッカが俺を見る目と同じだった。


「殿下、お待ちしてましたのよ」

「ああ…」


気のせいなのだろうか。
あの男が恐ろしい目で俺を見ていた。




ティアとお茶を飲み部屋に戻った俺は先ほどの事を考えていた。


「エデン、先ほどの者は誰だ」

「ジークベルト様が気にするような者ではございません」


口にもしたくないのか。
ならば聞かない方が良いと思う中、俺はお茶を飲もうとカップに触れた。


「ぐっ!」

「ジークベルト様?」

「ぐぁぁぁ!」


カップに口をつけた瞬間、体の自由が聞かなくなった。


痛い!
全身が焼ける様な痛さに襲われた。


「ゴフッ!」

「ジークベルト様!」


この時俺は気づかなかった。
俺の立場の危うさに。

常に危険と隣り合わせであることに気づかなかったんだ。

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