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番外編一章第一王子
3.母という存在
しおりを挟む俺は他の大人は怖くともこの人は違うと解るようになった。
新しい母となった人はなんというか気の強の強い人だった。
だけど嫌いじゃなかった。
「王妃陛下!お止めください。ジークベルト殿下はお体が弱く」
「弱いならば鍛えればいいわ。それよりも今日からこの子は私の部屋で寝かせるわ」
「なっ…」
今まで俺を冷たい目で見ていた使用人を睨みつける。
「聞けばジークベルトは食が細いようね?傍にいながら何をしていたの?」
「そう申されましても」
「私に何の報告もなかったわ。この子は大変な偏食だとしかね?けれどこの子は偏食ではないのよ…母親を亡くしたショックで食事に喉が通らないのにこんな固いパンを食べさせていたなんて論外です!」
「そんな!」
母上は俺の体の細さ、栄養管理の徹底を変えるべくこれまでの使用人から離れさせた。
「今後は私が傍で育てます。いいですね」
「しかし…」
「控え寄れ!」
食い下がろうとする侍女に母上は扇を投げて告げた。
「誰に向かって物を申している。何様か…私は王妃であるぞ!」
「ひっ…申し訳ありません」
「この国の国母に逆らうならば、それ相応の覚悟があろうな」
「滅相もありません」
母上の威圧感に怯えた使用人はそのまま部屋を去って行く。
「まったく腰抜けめ。しかし、このままでは…」
母上は俺を抱き上げながらため息をつく。
「ジーク、何も心配ありません。この私が貴方を強く立派な王子にしてあげます。ええ、この私に任せなさい」
この言葉から俺の生活は一変した。
「うー!」
「さぁ顔を上げるのです!しっかり背筋を伸ばして」
早朝から乗馬を共にして朝から大海原を駆け回るようになった。
一人ではないが母上の前に乗せてもらい。
「いい汗をかいたわ。さぁ朝食にしましょう」
そして朝食は出来立てのパンと温かいスープ。
具は柔らかく食べやすい物でデザートにプリンを出されていた。
「このプリンは私の大好物よ。栄養もあるからお食べなさい」
優しいプリンの味は母上みたいだった。
見た目どっしりしているのに中はとろけるようだった。
王宮で一人ぼっちだった中、手にした温かい気持ち。
けれどその日常は長く保たなかった。
「ジーク、貴方はお兄ちゃんになるのよ」
その言葉で俺の生活は一変する事になるのだった。
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