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番外編一章第一王子

1.大きな空と過去を思う

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北の辺境地を見渡しながらふと思う。
ここは最後の守りの砦とされ、隣国の海と繋がっていた。


生前母はこの領地をこよなく愛していたと聞かされている。


「ジーク、どうしました」

「いや、何でもない」

極寒の地とも呼ばれるこの領地は冬の期間が長く、冬はそれころ永久凍土と呼ばれている。
馬は使い物にならず、猛吹雪の時は馬の代わりにトナカイを使うのが多い程だった。


「ここは寒いでしょう。中に入りませんか」

「いや、この寒い空を見上げると思い出すんだ」

「思い出す?」


まだ俺が何もないちっぽけな存在だった頃。
あの王宮でも一人ぼっちだった頃に僅かに得ることができたぬくもりすらも奪われたあの時の事を。


「俺が王都を追放された後にここに行きつく前は本当に大変だった」

「私は貴方が王都を追放のみになった直後の事を詳しく知りません」

「楽しい話じゃないから。聞く程ではないし」

「ですが知りたいですわ」



俺の幼少期から、今までの事を思い出すと決して楽な道のりではなかったかもしれない。

それでも今にして思えば俺は恵まれすぎている。


心からそう思える。


「貴女に一方的に別れを告げられて泣いている間の事を…そしてジークが王宮で何を思って過ごされていたのか知りたいですわ」

「かなり長くなるがいいか?」

「ええ、執務は終わりましたし時間は沢山ございます」

「では茶をしながら聞いてくれるか」

「はい」



過去を振り返りながら温かいお茶を飲みながら俺は幼い頃の話をティアに聞かせることにした。


そう、俺がまだ幼子だった頃。
王宮でも孤立して誰も頼る人がいなかった頃の事だった。




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