【完結】真実の愛に目覚めたと婚約解消になったので私は永遠の愛に生きることにします！

115.亡き妹へ～シーゲルside

紆余曲折の果てに妹の無念はこれで叶った。
そして、妹の忘れ形見であるジークも幸せになれると思うと涙が流れそうになった。


「シーゲル殿、どうぞ」

「申し訳ありません」

「どうか、私が壁になりますので」


どうしてこうもお優しいのか。
シーゲル殿もアリスティア嬢も優し過ぎるのだ。

貴族でありながら、性根が真っすぐすぎる。


「私は妹に何もしてやれませんでした。そして十年前もジークに何一つ手助けをしてやれず」

「十年前は帝国も大変だったと聞きます。隣国と言えど他国の貴族である貴方が手が出せないのは当然です」

「だとしても私は大事な妹の愛する息子を救えなかったことは無念でした」


国の為に、政治の道具として今国に嫁いでからも手紙のやり取りをしても愚痴の一つも零さなかった妹を誇りにも思っていたが、同時に不器用過ぎると思っていた。


「私は前王妃陛下とは直接お会いしても個人的なお付き合いはありません」

「はい…」

「ですが、素晴らしい方だったのは確かです。そうでなくては現王妃陛下がジークベルト殿下を我が子のように愛せますか？」

「それは…」

前妻の子を我が子のように愛するなんて無理な話だ。
なのにあの方はジークを守る為に嫌われ役を自ら買っておられた。

そして試練を与え、十年後に戻ってくることを信じて疑わなかった。


「王妃陛下には感謝してもしたりません」

「ジークベルト殿下が素晴しい方だからではありませんか？幼少期からわんぱくはあれど優しく正義感の強い方でしたよ」

「そうだったのですか」

私はあの子の幼い頃を知らない。


「ええ、物心をがつく前に母を亡くした娘が寂しい思いをしなかったのはジークベルト殿下のおかげです。あの方に幾度も嫉妬して意地の悪い事もしてしまいましたが」

「侯爵閣下…」


私は涙が引っ込んでしまった。
失礼ながら吹き出しそうになってしまう。


「幼い殿下に私は大人げない真似をいたしました。娘を取られたくない一心で…なのにあの方は私の無理難題をクリアしてしまって」

「侯爵閣下は微笑ましい方だったのですね」

「娘には内密にお願いします」

「ええ、内緒にしますよ」


本当は誰にも渡したくないのだろう。
大事に育てて、慈しんでおられたのだから。


「見ているかい、君の息子は立派に育ったよ」

二人を見つめながら天にいる妹に祈る。

ようやく君を安心させてあげられる。


もう大丈夫だからゆっくりお休み。