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113.死神になった日~ルクシウスside③

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納得できないと言う思いを殺しながらも更に惨い出来事が起きた。


ジークベルト殿下から一方的な別れに傷つき泣き崩れるアリスティアに更に記憶を消す事が決まった。


「伯父上…」

「私は無力だ。このまま悲しい記憶を持ったままではティアの心が壊れる。殿下もティアの身を最優先に考え納得されている」


どうしてこうも、惨い事を。

「あの男の所為ではありませんか」

「言うな」

ジークベルト殿下を殺そうとしたのもあの男しかいない。


王の弟。

無能の癖に自分こそが王に相応しいと思っているあの男が仕組んだに決まっている!


前王妃陛下の実子こそが、王太子殿下に相応しいとこれ見よがしに第二王子殿下を贔屓して公の場でも差別していた。


血筋は良いかもしれないが、あの洟垂れ小僧は凡愚だった。


幼いから仕方ないと周りに甘やかされ、王妃陛下から引き離し王弟殿下の手元で教育をされて馬鹿に育ってしまった。



あんな馬鹿が未来の王。


そしてアルデンテ侯爵令嬢の婚約者。


あんなのに忠誠を誓うなんて耐えがたいとも思ったが、私には選ぶ権利はない。


伯父上が望むなら耐え忍んだが。



「殿下!殿下…どちらに!」


遊び盛りなあの馬鹿王子はことあるごとに王宮を抜け出していた。
側近もたしなめる事をぜずに。


「民の暮らしを見るのも勉強です」


等とくだらない事を言う始末だ。

何が勉強だ。
視察も婚約者に任せていた癖に。

遊ぶ暇ながあるならばもっと勉強しろ!

不満が募る中、あの馬鹿の所為でアリスティアの負担は増える一方だった。



「何をしているんだ」

「あら?ルクシウス、何か御用?」

「私の事はどうでも良い。何故そんな書類を…」


馬鹿王子が確認するはずの書類を何故アリスティアが?

「殿下は共通語しか読み書きができないし。辺境伯爵へのお礼状の書き方が不慣れなのよ」

「は?」


未だにそんなこともできないのか?
王太子殿下が聞いてあきれる。


何より心配になったのはここ最近王宮の執務室に缶詰で寝ていないアリスティアだ。


あの馬鹿は何をしている!


そんな時に聞かされたのが。


「伯父上、どうなさいました」


「ルクシウスか」


ここ数日思い詰めた表情の伯父上は顔色が悪かった。


「殿下が婚約破棄を願われた。他の好いた女性がいるからその方を正妃にしてティアを側近と結婚させるそうだ」

「なっ…何を馬鹿な!何様ですか!」


いくら何でも貴族同士の婚姻に王太子が勝手に決めていいはずはない。


何様だ!
散々アリスティアを利用して!



「ティアは既に出家も覚悟だそうだ。死んでもそんな屈辱は嫌だと…」

「当たり前です」

そんな事を受け入れたらアルゼンテ家は笑い者になる。


「万一の時は私も覚悟しているが」

「伯父上、どうか私達の事はお気になさらないでください」

「すまない!」


何処までも我らを馬鹿にすれば気が済むのか。

そちらがその気ならもう容赦はしない。


消えて貰おうじゃないか!


この日をきっかけに私は馬鹿共を狩ってやろうと心に決めたのだ。


伯父上とアリスティア。

そしてジークベルト殿下を苦しめた以上は生き地獄を味合わせてやろうと心に誓った。


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