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112.死神になった日~ルクシウスside②
しおりを挟む騎士の鑑と謡われる伯父上は少しばかり人が良すぎた。
対する私は父親に似て悪賢く、害をなす人間には容赦こそはしなかったが。
善人を罠にかける程落ちていない。
父はその点、最悪だったが。
「母上、私は伯父上を敬愛しております。育ての父はあの方です」
「ルクシウス」
「ですから、私はアルデンテ侯爵家をこの命に代えてもお守りいたします。そして、主として既に忠誠を誓う方が降ります」
私にとってもう一人忠誠を誓う方がいる。
「何ですって?どなたです」
「第一王子殿下のジークベルト殿下です」
「まぁ」
現在はアリスティアと婚約を結んでいるが、未だにジークベルト殿下に後ろ盾はなかった。
普通に考えて馬鹿だろとも思った。
隣国の皇女の血筋を持つ方に無礼を働くなんて。
鎖国では国はなら立たない。
貿易を広げないと国の資源はあっという間に底をつく事を何故理解できないのか。
「現在もジークベルト殿下は辛い状況を耐えておられます」
「やはり前妻の子なので王妃陛下も」
「いいえ、母上。それは偏見です」
私から見ても王妃陛下は愛情深い方だ。
元より陛下と従兄関係で恋愛感情はないのは明白だった。
それに、ジークベルト殿下に深い愛情を持って接している。
「少々変わった女性ですが、真っ当な考えを持った方かと」
「無礼ですよ」
「はい、申し訳ありません」
ジークベルト殿下も尊敬できる方だ。
ご自分の立場が不利だと理解しながらも努力を怠らない。
だから、あんなことになるなんて夢にも思わなかった。
「伯父上!アリスティアと殿下の婚約が白紙とはどういうことです」
「殿下が毒殺されかけた」
「なっ…」
私は王都を離れていた時期に、事件は起きた。
「幸いにも一命は取り留めたが、毒により後遺症が残った」
「殿下は…」
「王妃陛下は辺境地に追放という形で殿下の御身を守られるつもりだ。北の領地の薬草ならば殿下の後遺症を治す可能性もある」
「しかし!」
公に廃嫡とすることになればどうなるか。
「殿下も納得された」
「嘘です!そんな…」
アリスティアを捨てるのか?
あんなにも二人は思い合っていたのに。
「殿下は苦渋の選択をされた。王妃陛下も二人を守るべく決断された」
「だからと!」
「今はどうにもならない」
「…解りました」
本当は納得できない。
できないが、伯父上をこれ以上苦しめたくなかったから言い聞かせた。
なのに、最悪のタイミングで王家はアリスティアと無能な洟垂れ小僧との婚約を取り決めたのだった。
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