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105.自慢の母
しおりを挟む俺は母上を憎んだことはなかった。
王都から追い出される形になった時も一度だって。
前妻の子である俺を我が子同然に可愛がってくれた。
一時は疑いもしたし、辛かった。
だけど王宮の外を出て痛いほどわかった。
俺があ母上にどれだけ守られて育って来たかを。
「母上は立派でした」
「ジーク」
「最善の道を探し、俺に居場所がない事を理解しました。貴女は私の命を守り、心を守ってくださった」
どれ程辛かったか。
前妻の子を我が子のように思い育てるのは並大抵の事ではない。
「もし母上を母親として失格というなら、俺が許しません」
この人以外に王妃の重圧に耐えられるのだろうか。
「王妃陛下、私は貴女様を尊敬しております。今も」
「アリスティア…」
ティアに対しても厳しく接して来たのだろう。
強くなって欲しい、社交界で生きれるようになって欲しい思いが。
「どうして…」
俺達を泣きそうな表情で見ていたディエゴは、疎外感を感じてたのだろう。
その目は置いて行かれた子供のようだった。
哀れでも同情の余地はない。
「エドガー、母上の苦しみをお前は少しでも考えたことはあったか?」
「え?」
「王弟殿下は母上と対立し、隙あらば失脚を狙っていた。そうなれば国は崩壊する。内乱だって起きるだろう」
「そんな事…」
「あの男ならやりかねない。今、国が安定しているのは他国との外交が上手く行っているからだ。外の国で母上を支持する声が大きいからだ」
病床に臥している王の治める国など格好の的だったのだから。
「鎖国では国を守れない、だからこそ母上は他国と手を結び協力体制を取ったんだ。だがあの男は、私利私欲の為に国を乱し、辺境貴族を遠ざけ、前時代的な考えを押し付けた…平民や下級貴族出身の女性を差別してな?」
「そんな!」
「お前はあの男に甘い言葉で惑わされた。そして傍いるそいつに上手く利用されたのだから」
「くっ!」
既に抵抗する事も出来ない程押さえつけられているが、まだ俺を睨む体力は十分残っているか。
「お前は多くの人を傷つけ利用した。この対価は自分で支払うのだな」
「ふざけるな!私が…ぐぁ!」
「口の利き方解らん奴だな。そろそろ貴様の口汚い言葉にも限界だ。おいくちを塞げ」
「モーモー!」
さりげなく酷いな既に家畜扱いをしている。
「ルクシウス、何処でそんな物を」
「最近の罪人はしぶといので作らせました」
既に人間扱いをしていないな。
口に口輪と首輪を設置するあたりが鬼畜外道だった。
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