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98.歪みの原因~エドガーside②
しおりを挟むティエゴ様は従順な方だった。
伯父上の言う事を良く聞き、私が助言したことを素直に聞く方だった。
王とは所詮そういうものだ。
動くのは周りの物で、臣下が優秀であればなんとでもなる。
ただ国王陛下は無能だった。
だから、王妃の言いなりになるのだ。
王妃陛下が王の代理をすることは間違っている。
女性が政治に口を出す等ありえないし、王妃の役目は王のそばにいて子を産み、側室の和を守る事だ。
だが、王妃陛下はでしゃばり過ぎていた。
あろうことにも、大臣や官僚に関しても身分の低い者や他民族を選んだり、海外の貿易を活発にするなど無駄な事をしていた。
王弟殿下である伯父の言葉を聞こうともしなかった。
むしろ会議では伯父上の発言を却下させ、恥をかかせるような真似をしていたと聞く。
あんな傲慢な女が王妃のままでは国が潰れる。
聞けば発展途上国の国や奴隷になった女に移民して来た者を受け入れるなんて無駄な金を使っている。
どうせ自分の人気どりだろう。
目的の為には手段を選らないので国内に味方が少ないからせめて国民を味方につけようとしているだけだ。
アリスティア様ならば…。
だが、その一方で私の思いは消えることはなかった。
ティエゴ様の婚約者として完璧であるが、ティエゴ様はアリスティア様を愛していない。
政略結婚なのだから当然だが…
だが、私の欲望を押さえていた鎖が切れようとする日が来たのだった。
「エドガー」
「はい」
「君は恋をしたことはあるか」
「恋ですか?」
勉強の休憩時間の事だった。
とあるロマンス小説を手に取って尋ねられた。
最近はボーっとする事が多い。
「僕は真実の愛を見つけたんだ」
「真実の愛?」
「うん、お忍びで下町に行った時に…僕は本当の愛を見つけた」
本当の愛とは何だ。
確かに聖書でも真実の愛の尊さを描いた物はあるが。
「僕は偽りの愛に生きる事は周りを不幸にすると思う。自分の幸せを考えられない者に他者を幸せにできないよ」
「そうですね」
この時、私の中に諦めていた思いが強くなった。
真実の愛に現を抜かされているティエゴ様は愚かだった。
しかし、身分の高い貴族や王族には側室がいてもおかしくないのだから。
「しかしアリスティア様がいらっしゃいますので…側室のお迎えするということでしょうか」
「いや、僕は役目の為の婚姻はしない。母上ののように不幸になる女性を増やすだけだ。僕が王となった暁には一夫一婦制にする。彼女を…ロゼッタを正妃に迎えて側室は廃止にする」
この言葉で私は決めたのだ。
あの方を手に入れよう。
私の背を押したのは皮肉にもティエゴ様だった。
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