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97.歪みの原因~エドガーside①
しおりを挟むずっと高嶺の花だった。
高貴な生まれで気高くも誇り高く美しい人。
アルデンテ侯爵家のご令嬢。
幼いながらにして剣のように鋼の心を持ち、凛とした佇まいに私は一瞬で心を奪われた。
だが、あの方は雲の上の存在だった。
伯父が王弟殿下であろうとも、私の身分では手が届かなかった。
なのに!
「ジークベルトはどうした」
「今日も愛しのアリスティア嬢と一緒ですわ」
何故あんな後ろ盾もない王子が!
前王妃陛下は隣国の皇女であるが、養女に過ぎなかった。
皇族の血筋はあれど、直系ではないにもかかわらず王妃として嫁ぐも出産後病床に臥して亡くなった役立たずだった。
しかし問題なのは王子を産んだ事だった。
前王妃が無くなって喪が明けてから、現王妃陛下が嫁がれたのだ。
王妃陛下は王子を身ごもり、次期王太子殿下となるのは他国の血筋を持つ余所者ではなく正統な血筋を引きつぐ方だと教えられた。
伯父上は血筋を最優先すべきだとよく言っておられた。
私も賛同していた。
しかし、第一王子が優秀であることから血筋よりも実力を重視すべき声が上がり、しかも同時期にアリスティア嬢との婚約を両陛下が御認めになった事で事態は変わり出した。
「このままではならぬ!あんな他国の血を持つ女の子供が王太子など!」
私も同感だった。
野蛮で、ガサツな帝国の血筋が入った王子など論外だ。
あろうことにもアリスティア様にも無礼を働き、剣の稽古に付き合わせるなど!
最近は愛称で呼ぶ仲になっていた。
「ジーク待って!」
「早く来い!本当に遅いな」
野蛮な王子に高貴なアリスティア様は似合わない。
そんな折、あの男は何者かに毒殺され、アリスティア様との婚約は白紙になった。
そして王妃陛下はようやくあの男が不要の遺物だと理解され、辺境地に追放した。
だが、アルデンテ侯爵家の後ろ盾は大きい故に伯父上がティエゴ様との婚約を取り決めた。
だが王妃となっても王には側室がいる。
私の身分では婚姻を結ぶことは叶わなくともティエゴ様の側近であれば一番近くにいることができる。
この時はそれでよいと思った。
一番傍で使え常にお守りすれば私に心を寄せてくれると思った。
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