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85.愚か

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誰だってない物ねだりをする。
でも、ずっと欲しがっていても仕方ないし、大人になれば解るわ。

自分は自分で他人は他人。

もし、どうしても欲しいならば努力するしかない。
努力だけで得られない事もあるけど、ジークは手を伸ばしあの手この手を使って諦めなかった。


王妃陛下も愛する人を守る為に手段を選ばなかった。


「ティエゴ、お前はロゼッタ嬢を信じていないのか」

「そうではありません。ですが…」

「何だ?お前は鳥籠の中で飼い殺しにして、苦しめ、手を差し伸べたつもりでいたのか?本当に愛しているならばお前が平民になるぐらいの覚悟はあったのか」

「兄上、何を言っているんですか」

どうしてここまで言われて解らないの?
例え王太子殿下の命令であっても平民の娘を簡単に婚約者にすることはできない。

ましてや正妃なんて。

「お前は正妃という存在が常に命を狙われ敵が多い事を解っているのか?後ろ盾がなかったらすぐ殺されてもおかいしくないというのに…」

「ですからそんなもの護衛を…」

「ティエゴ様、私は幼少期に何度も侍女に毒を盛られそうになりましたわ」

「は?」

本当に何も知らないのね。
いいえ、知ろうともしなかったのか。

「何を…君は何も!」

「いう必要がなかったからです。私だけではありません。婚約者候補の中には命を狙われた者は多いですわ。外敵ではありません。王宮内の侍女によるもの」

「そんな…何で」

「派閥争いをしているのです。我こそはと思っている者は邪魔者を排除しても当然です」


毒を盛られたなんて恥だし、王太子殿下に伝える事ではなかった。


「お前はロゼッタ嬢が侍女に腐ったミルクの入ったお茶を出されていた事や、お菓子に毒が入っていた事も気づいていないだろう」

「毒…」

「王宮とはそういう場所だ。いかに傍仕えの者が守ろうとしても限度がある。四六時中護衛がついていてもだ」

王太子殿下のような立場ならいざしらず。
後ろ盾のないロゼッタに護衛をつけても、完全に守るのは不可能だった。


「お前は彼女を王宮に連れて来て対策をしたのか?常に解毒剤を持たせ、銀食器や、身を守る為の短剣を渡したりしたのか」

「ロゼッタは女性ですよ。そんなもの…」

「ティエゴ様、私は幼少の頃から身を守る為の訓練は受けておりますわ。万一の時の為にも」

もはや何も言えないだろう。
けれど、何かを言いたそうに、助け船を期待しているようだった。


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