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78.社交界へ

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その夜、一人の令嬢が多くの男性の視線を独り占めをしていた。

静かな所作でありながらも、存在感があり。
美しい歩き姿と背筋を伸ばし、真っ赤なドレスを身に纏いながら王宮では誰よりも目立っていた。



「誰だ…」

「外国の方かしら?それにしてもなんて鮮やかなドレス」

「情熱的だな…」


通常、赤や黒のドレスは滅多に身に纏う事がない。
その理由は万人向けしないことが一番の理由と悪印象を受けることが多々あるのだ。


ただ、黒は高貴な色でもある。
女性の美しさをより強めてくれる色で、赤も同様だった。

赤は勝利を意味する色でもあるのだから。


「はしたないドレス…貞操観念がないわ」

「ええ…」


好意的な男性に対して若い女性は敵意を持っている。
特に独身の女性からすれば、今日の為に着飾っていた側からすれば面白くないのだろう。


遠目からチラチラ見られ、陰口を言いながらも面と向かって言えないのはエスコートしている相手がそれなりの地位に就いている貴族だからだ。


「大丈夫か?」

「はい」

「ご夫人達もこちらの様子を伺っているな。本当に恐ろしい程の敵意を見せている。あれは鬼だな」

「ニコニコ笑いながらいいんですか」

「バレなければいいんだ。見た目だけ取り繕った醜い老婆だからな」


言いたい放題言っているが、公の場では完璧に貴公子を演じるので問題ないが。



「いい性格をしているな」

「我が従兄ながら流石というべきか」


現在、ロゼッタのエスコートをしているのは私の従兄でもあるルクシウス。
社交界では微笑みの貴公子と呼ばれているのだけど、貴族らしい顔を持ち、腹黒さを持っている。


外面は大変良いのだけど。


「そう言えば、王弟殿下の怒りを買って一時は地方に行かされていたような」

「ええ、ですが、地方先の領主様や領民の皆様にはや異変慕われていましたの。口八丁は得意ですから」

ある意味、王都よりも辺境地や地方の方が性に合っていたようで。
しばらく音信不通であったのだけど。


でも、情報も届かない領地を開拓していたとは知らなかった。
立場が弱い百姓貴族を手助けしながら信頼を勝ち取り宰相や大臣を味方につけて他国でも評価を得ていたとか。

彼が王都に戻ったのは私が婚約解消されてすぐに帝国に行った後だったらしく。


一番怒っていて、ティエゴ様暗殺計画を企てようとしたと聞かされたときにはゾッとしたわ。

でも、私がジークとの婚約の時に王弟殿下が何もしなかったのは彼が抑え込んでくれていたからなのでそこは感謝しているわ。


誰もが遠目から見ている中、一人の男性が声をかけられた。


「ロゼッタ…」


その人物とは、ティエゴ様だった。


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