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63.恐ろしき人

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表向きはお茶会であるけど、今後の為の作戦会議だった。


「少し甘い物を食べたところで本題に入りるわね」

「はい」


テーブルに広げられたのは海図だった。


「現在、船は経路はここだと思うわ」

「ここは…」

「ええ」

私が帝国に向かった時とは異なり、障害が多く。
先帝陛下が妨害をしてくださっていると聞いているので遠回りをして行かなくてはならない。


「どんなに遅くても、到着しているはずだ」

「ええ、無能な男だわ」

王妃陛下、本当に毛嫌いしているわね。

「足止めはしてありますし、ちゃんと手続きをしていたのならここまで時間はかかりませんもの。あの間男が帰国した時にはある程度終わっているように協力者を呼びましたの」


協力者?
しかも、とってもいい笑顔を浮かべる王妃陛下に私もジークも冷や汗が流れる。


「ジーク」

「言うな。母上は一度的と判断した者には情け容赦ないんだ」


慈悲深い方であるからこそ、不正を許さず、罪を犯した者には容赦がない。
ちゃんとした理由や、一時の過ちならば構成することができると判断すれば慈悲をかけるけど。

「随分と私を侮ってくれようだもの。精々自分が何処まで身の程知らず馬鹿な真似をしたか思い知るといいわ。そうだわ。この際あの馬鹿弟も一緒に沈んでもらいましょう」


「王妃陛下…」

「素敵です女王様」


ロゼッタさんはある意味大物になるわね。
普通なら怯える所を尊敬の眼差しで見れる人は少ないわ。


「リュクセンス侯爵には今回の事は手紙に送っているから問題ありませんわ。後は国境を守るクランベール伯爵家にも事後報告になりましたが手紙を出してますから」

「「は?」」


リュクセンス侯爵家は王族派であるけど、中立側だ。
辺境地を束ねる西を守護する獅子とも呼ばれているお方だ。

対するクランベール伯爵家も同様に外敵から国境を守る一族。


共に優れた軍人である一方で、貴族よりも騎士としての考えが強い。

宮廷貴族を良く思わない一面を持ち、ティエゴ様は彼等に認められていない。


「待ってください母上、あのお二人は俺の後見人を勤めてくれた方ではありませんか」

「そうですわ。誠実で律儀な彼等はずっと貴方の身を案じてましたの」

「俺が辺境地で生きる術を与えてくださった二人に…」


ここまでくればこの先は安易に想像できる。


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