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58.危険な趣味~ジークベルトside
しおりを挟むこれはどういう状況だ。
「ティア様…」
「可愛い人」
俺の目の前で繰り広げられている茶番劇は。
「美しいわね。乙女同士の絵は」
「母上…」
忘れていたが母上は昔からオペラが好きだった。
特に女同士の修羅的な物語も好んでいた気がするが忘れたかった。
「人を脅して読んで見せたかったのはこれですか」
「己の心に素直になるべきとティアに言われたのよ。だからそうしたまでよ」
事の発端は、ティアが心配で王宮に出向いた俺はエデンの協力で王宮に入ることができたのだが、母上にすべて見破られており、俺達は対面した。
正直緊張をしたが、母上は俺に頭を下げ詫びを入れた。
その時の母上は幼い頃のままの優しい母上だった。
聞けばあの時は俺とティエゴ。
そして国の内乱を避けるべく仮面を被った事を聞かされた。
俺も違和感は合ったんだ。
辺境地に追いやられたと言えば聞こえが悪かったが、信頼できる側近に、不便さはあれど住まいもしっかり手入れがされていた。
邸の外側は酷いのに対して内装は居心地が良かったのだ。
使用人も俺が幼少期の頃から面倒を見てくれた侍女は乳母まで呼び戻していたから。
母上が本当の想いを告白し、俺が力を得て帰って来るのを待っていたと聞かされた。
そして俺が母上に差し上げた花は押し花にして飾られていた。
全てはすれ違いだった。
いや、俺が怖がって確かめなかったんだ。
母上は俺に憎まれようとも、守る為に心を鬼にしていたのだ。
全てを知り俺は十年越しに母上と抱き合った。
はずだったんだが。
「今から美しい物を見に行くわよ」
「は?」
母上に手を引かれ、隠し通路を通って向かった先は祈りの間だった。
「母上、何です」
「ちょっと覗きなさい」
「母上…」
国母とあろう者がなんとはしたない事を。
「母上、はしたないですよ」
「みみっちい事を言うんじゃありません。なんて肝の小さい男なのかしら?」
鉄壁の理性はどうなった。
完全に欲望に忠実になっているんだが。
「私はティアと話して少しすっきりしましたの。だから公務に差しさわりがない程度は欲望に忠実に生きてもいいのではないかと思いましたのよ」
「忠実すぎるでしょう」
思えば俺が小さい頃から母上はぶっ飛んだ性格で残念な所があったらしい。
上手く周りに隠していたが。
「――!」
「――!」
ふと、扉越しにティアとあの少女の声が聞こえた。
扉を開くと何故かティアに見惚れる表情をしていた。
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