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51.私の一番~ロゼッタside
しおりを挟む怒涛のような日々を送りながら私は流されていたのかもしれない。
確かにティエゴ様に恋をしていたのも本当だった。
だけど、私は恋に恋をしていたのかもしれない。
幼い恋心で初恋だったから逆上せ上がっていたと言っても良い。
初めての恋で、諦めなくてはならなくて。
でも、ダメだと言われながらもどうしても気持ちが消えることなく強くなっていくばかりだった。
だけど、両親があんな目にあって、私の中で迷いが生まれた。
院長先生の助言を聞かず、状況も理解せずに。
私は恋に溺れてしまった結果に沢山の人を傷つけてしまった。
私はあの人を…
アリスティアさんを傷つけるつもりではなかった。
でも王宮で彼女の噂を聞いて。
私は自分の恋を守る為に、あの人を酷く傷つけてしまった。
幼い頃からずっとティエゴ様の傍にいて、お妃様になるべく辛い教育を受けている事。
そして私が王宮に来たことで酷い中傷を受けている事を。
なのに、エドガー様も気にする事はないと笑っていた。
どうして笑えるのか。
あの人は泣いていた。
仮面を張りつけながらも王妃様とお茶会をした時も、私と一緒にいた時も泣いていた。
少なく事も私には心が悲鳴を上げているように見えたのに何故ティエゴ様はアリスティアさんを人前で晒し物のような目に合わせて何とも思わないの?
そしてようやくあの方が幸せになろうとしても、邪魔するのだろうか。
「まだ悩みごとですか」
「はい」
ティエゴ様はアリスティア様を憎んでいるのかしら?
「神官長様、ティエゴ様は何故、アリスティア様を傷つけるような真似をするのでしょうか」
「ロゼッタ…」
「私にはこんな事を言う資格はありません。ですが…本当に好きな人が婚約者になったのに、何故邪魔をするのか解りません」
ティエゴ様はアリスティアさんに幸せになって欲しい。
真実の愛を見つけて欲しいと言ったわ。
なのに、何故?
「ジークベルト様とアリスティア様は思い合っているのなに…どうしてエドガー様は」
私には詳しい話をしてくれなかったけど。
あの二人が結ばれることをティエゴ様は良く思っていない。
矛盾していて解らない。
「私は、あの人を傷つけました。だからこそ、もう傷つけたくありません」
「ロゼッタ」
「私はティエゴ様と別れて、王宮を出ようと思います。王都を出て両親と静かに生きようと」
ティエゴ様に出会う前に戻るだけ。
これまでの平和な生活に戻れるようにしてくれると王妃様が言ってくれた。
お父さんの怪我も良くなって来たし、お母さんの病気の治療費も王妃様がなんとかしてくれた。
安全の為に貴族達が手が出せない田舎で静かに暮らせるように手を尽くしてくださるそうだ。
だけど、心の中でまだ引っ掛かっている物がある。
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