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41.残酷な現実~王妃side
しおりを挟む二週間してようやく意識を取り戻したジークに私は直接会わせてもらえなかった。
「何故私が会ってはならないのです!」
「落ち着きください、殿下はまだ絶対安静です」
私を止めに入ったのは、王弟殿下だった。
「万一御身になにかあれば取り返しがつきません」
この言い方。
ジークは万一の事があっても良いと言いたげだった。
「それよりも、ジークベルト様の代わに新たな王太子に関してですか」
「なっ…」
既にジークは助からないと考えている。
この男は!
「ティエゴ殿下を立太子するのがよろしいかと」
「あの子は体が弱く、教育もままならないでしょう?」
「ならば優秀な令嬢を婚約者にすればよろしいかと。アルデンテ侯爵家の娘が適任です」
「そっ…それは」
この時気づいていた。
この男はティエゴを立太子する為に、ジークを殺そうとしたのではないか。
「正気?彼女は…」
「こうなった以上は、ジークベルト殿下との婚約は無理でしょう」
最初からティエゴの後ろ盾にする為に。
アルデンテ侯爵令嬢を後ろ盾にする為に、ジークを。
「やはり血筋が正当な方が王となるべきでしょう」
ニヤリと笑う笑みに、化け物だと思った。
私は本当の意味で恐ろしいのが敵国ではなく身内だと改めて思い知った。
王宮内でジークを守る事は出来ない。
外に出して、己を守る術を身に着けさせるしか道はない。
苦渋の選択を迫られた。
「マリシス…本当に良いのか」
「ええ、ジークベルトを王宮から出し、辺境地に向かわせます」
表向きは養子に出したと噂を流し、彼等を謀るつもりだ。
私は仮面をかぶり、ジークに厳しく接した。
本当は直ぐに抱きしめたい。
だけどできない。
してはならない。
「ジークベルト、今の貴方には何もありません。後見人も血筋も味方も。故に告げます。王都の外へ出て力を得ないさい。そこで死ぬならその程度だったまでです」
「王妃陛下!お言葉ですが…」
「いい」
ジークの側近としてつけたエデン・モーリスが声を荒げた。
まだ成人前でありながら王妃である私に歯向かうのは問題だけど主を最優先に考えるのは及第点だった。
「かしこまりました」
「ジークベルト様!」
「ただお願いがございます」
私の顔を見ながら覚悟を持って告げた。
「私の記憶を彼女から消してください」
「何ですって?」
「既に私は彼女と並び立つ事は出来ません。ですが真実を知らない彼女は泣くでしょう。私を思って…私を庇えば命の危険がある。だからこそお願いします」
泣きたいの必死で耐えながら告げる。
「アルデンテ侯爵令嬢が危険な目に合うようなことがない様にしてください」
私は泣きたくなった。
自分の事よりも愛しい婚約者を思うのね。
「愚かな」
私の言葉に何も言わないジーク。
だから私は鬼となる事を決めた。
優しい母にはなれないからこそ、残酷は言葉を投げかけた。
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