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39.不穏な空気~王妃side
しおりを挟む心の中で何を思おうが自由だし、どうこう言う気はないわ。
でも口に出して、ベラベラしゃべるなんて。
しかも私に仕えるメイドや侍女だなんて!
「かーさま?」
「ジーク」
怒りを殺すのに必死だった私はジークが傍に来たことも気づかなかった。
「どうしたのですジーク?あらお花ね」
「かーさま、いたいの?」
お腹をさすりながらいたわるようにしてくれるジークが私に差し出してくれた花は私の好きな花だった。
「かーさま。いたいのとんでけ!」
「ジーク」
貴族や侍女達が勝手な事を言っても、私はジークを手放したりしない。
この子は私が何が何でも守って見せる。
前王妃の子供。
他国の血筋が何だと言うの?
イグナス帝国から恩恵を受けていたのも忘れてなんて恥知らずな。
例え子が生まれてもジークは私の大事な息子。
それだけは変わらないわ。
「陛下!」
「何だ。今日な何もしていないぞ!」
「何かする予定でしたの…またそんな塩分の塊を食べて!」
メタボ予備軍の陛下は塩分の塊のつまみやお酒を控えるように言われていたのにこっそりと!
いいえ、今は置いておきましょう。
「陛下、私の傍付きの侍女数名ですが、部署の移動を侍女長に命じてください」
「何だ?何かしでかしたのか」
「若すぎる故に侍女としての自覚が足りないようですわ。ジークを軽視し、あげくの果てに私が王子を産めばジークは用なしだと噂をしております」
「何だと!」
「別に心の中で何を思おうが勝手ですわ。ですが公の場でそのような迂闊な態度を取る者に侍女は向いておりません」
侍女とは主の秘書であり補佐であり懐刀にもなりえるのだから。
「それから、ジークに優秀で信頼できる傍仕えを一刻も早くお願いします」
「うっ、うむ」
「私はジークを我が子と思っております。いずれ生まれるこの子にも兄として敬うように言い聞かせるつもりです。後に王太子となるのはジークです」
血は繋が伝手いない。
だけど私は、あの子に真摯に向き合い愛情を注いで来た。
例えお腹を痛めた子供ではなくとも、ジークは私の息子なのだから。
「マリシス、そこまで…」
「陛下が頼りないのは存じておりますので」
「泣いていいか」
本来ならもっと威厳を示して欲しい所だけど、昔から何処か抜けていた。
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「うむ、解った」
大丈夫よ。
私はこの時、信じて疑わなかった。
ジークは王太子となり次代の王となるのだと。
生まれてくる我が子と王位継承権を争う事もないと信じて疑わなかった。
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