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37.判断~王妃side
しおりを挟むイグナス帝国より手紙が届いた。
内容は我が国を視察したいと言うものであったけど。
内容を深く読めば簡単な方程式だった。
「王妃様いかがなさいました」
「メディス伯爵は、国境を抜けた頃ね?」
「はい、恐らく」
我がアストレイ王国からイグナス帝国は北の辺境地を通らなければ倍の時間がかかる。
しかし今はジークベルトがその領地を預かっている故に勝手に通り過ぎる事は許されないので遠回りになっているはず。
「できるだけ足止めをしなさい。あの馬鹿に身の程を弁えさせなくてはなりません」
「かしこまりました」
これまで勝手な真似を続け増長するティエゴだけど、陰に操っている者がいる。
元から素直過ぎるのも問題であったけど、今回の茶番劇に組しているのは貴族派というわけではない。
恐らくエドガーの独断という考えが強まった。
確かに、裏で糸を引いている人間は他にいるけど。
彼等からすれば、アリスティアを側妃にするか。
エドガーの妻にして地位を失墜させた後に甘い汁を啜りたいという浅はかな考えが見え見えだった。
だけど、番狂わせな事が立て続けに起きたのだ。
「ロゼッタさんは」
「はい、お祈りをされております」
「そう」
平民の娘を妃にすると無茶を言い出し、公の場でとんでもない事をした馬鹿息子が選んだ少女には警戒心を持っていたが、彼女自身も被害者であることが確実になった。
「ティエゴの配慮の無さで彼女はご両親が病気になったり町から爪はじき状態になったのは申し訳なく思ったわ」
「ですが、用意周到過ぎな気が…」
「居場所を失い、逃げ場を無くすためでしょう」
調べさせた書類を確認して私はロゼッタさんを精神的に追い込み逃げ場を無くすように仕組んだ黒幕に苛立ちを覚えた。
氷の女王とも呼ばれているけれど。
私だって子を持つ身であり、親を思う気持ちが解る。
「彼女は白だわ。不運だったと言えばそれまでだけど」
「ティエゴ殿下を知らずに慕ってしまい、思いを殺せなかったのでしょう。私も彼女を不憫に思いますわ」
貴族と異なり平民は恋愛が自由だった。
ましてや、まだ夢見がちな年齢で恋に憧れるなら彼女の行動はおかしくない。
ただ、彼女の性格を考えれば。
両親と自分の恋を天秤にかける程愚かとは思えない。
実際、あの舞踏会から大人しくしていると聞くし。
思い詰めた表情をしているようだ。
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「そう」
誰に謝っているかは解らないけど。
けれど、このままにはできないわ。
「このままでは彼女は鳥籠で飼い殺しになるでしょう。自由な空を羽ばたく鳥に温室は耐えられないわ」
日に日に顔色が悪くなり食事も喉が通らない状況では、彼女の心も長く持たない。
だからこそ私は彼女を自由にしてあげなくては。
その対価は小さきないけれど。
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