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23.留守中の騒動~侯爵side

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王都を出て、無事に帝国に到着した手紙が届き安堵した。

「本当は私も同行したかったのですが」

「リィナも一緒だと、早々にバレるだろう」

「はい」

邸にてため息をつくリィナは今回の計画では同行しないことになった。
最初から一緒に同行すれば早々にバレるし、時間稼ぎを私達でしなくてはならないのだから。

「王宮の様子はどうだ」

「ティエゴ殿下は、王族派の貴族からの落胆の声を抑え込むことができずにいますわ。侍女達も評価が下がっております」

「そうか」

この程度は大方、予想はでいたのだが、思った以上に被害は大きかったな。
王妃陛下は王宮ではティエゴ殿下を庇う事はしないだろうと思ったのだが、一番の予想外は。


「ただ王妃陛下が例の平民の少女を王宮から追い出す真似はしておられませんし、護衛と侍女を着けているようです」

「そうか…」


当初は娘を追い出し侮辱する原因となった平民の娘を恨んだが、今は違う。


「王妃陛下の言いつけ通り、教育を受けているそうです。ですが、難航しています」

「当然だ。ティアは10年間の厳しい教育を受けて来たんだ。それを平民の少女がすぐに覚えれるはずがない」

侯爵家の娘故に、幼い頃から淑女教育を受けた後に10年間は厳し過ぎる教育を受けて来たのに、淑女教育をまったく受けた事がない者が簡単に習得できるわけがない。

ティアも休む暇もなく、寝る時間を惜しんでお妃教育を耐えたのだから。


「ロゼッタという少女…彼女はどうするのでしょう」

「解らないな。彼女が望んで正妃になりたいならば、茨の道になるだろう」

「貴族派であっても利用価値、メリットがなければ難しいと思います」


誰がティエゴ殿下に良からぬことを吹き込んだか知らないが、貴族派ならば形だけの王妃をティアにさせて側妃を貴族派の息のかかった娘を差し出し、世継ぎを産ませようとするならば解る。


しかし、正妃を身分の低い娘に任せれば公務を誰が回すというのか。
側近のメディス伯爵と結婚させ、後ろ盾と、公務の代理をティアにさせるにしても限界がある。

借りに上手くいったとしてもだ。
末代までティエゴ殿下は笑いものにされるだろう。


正式な婚約者に不義を働き身分のない者を正妃にして、その後ろ盾と後始末を押し付け。
自分の側近と無理矢理結婚させ生涯利用し続けた最低な男と呼ばれ、平民の少女も社交場で笑いものにされるだろう。


「平民の少女が少し哀れに思えてくるな」

「もし…彼女が王室の椅子に座る事を望んでいないのでしたら」


ティエゴ殿下が勝手な思い込みで話を強引に進めたとすれば気の毒という次元ではない。


「旦那様!」

「何です。騒々しいですわよ」


御者が慌てて私の部屋に入って来た。
普段ならこんな真似は一切しないのだがどうしたのだろうか。


「ティエゴ殿下とメディス伯爵様がいらしてます」

「何?」

約束も無しに、随分と無礼な事だな。


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