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13.第一王子
しおりを挟む前王妃様の第一子であり、ティエゴ殿下とは異母兄弟となる。
現王妃様とは不仲であったり不良王子だと言われ、色々噂が絶えない方だった。
「帰還したか、ジークベルト」
「国王陛下、北の大陸の制圧が完了致しましたので。急ぎ帰還いたしました。今夜の舞踏会に間に合わせる為に挨拶が遅れましたことを心からお詫びいたします」
「良い、良くぞ無事で帰って来た。お前の事だから心配はしていなかったが」
珍しく陛下が公の場に現れて驚いた。
数年前から陛下は病に倒れ、公務は王妃陛下が代理を務めていたと言うのに。
「兄上…」
「久しぶりだなティエゴ。態々俺の為にここまで派手にすることはないと言うのに」
「何を…」
話しが全く見えないわ。
何故私は第一王子殿下に肩を抱かれているのかしら?
「ジークベルト殿下…」
「相変わらずだな。メディス…だが、こういうことだ」
こういう事って何?
言っている意味がまるで解らないわ!
「これは、何がどうなって…」
さっきまでの流れでいけば私がメディス伯爵の婚約者だと誰もが思っただろう。
なのに何故と?誰もが疑問に思うだろう。
「我が弟であるティエゴが言っていたであろう?新たな婚約者は俺だ」
「「「は?」」」
私もは?と言いたいわ。
何がどうなって私と第一王子殿下が婚約者になるの?
いくら何でも無理がある。
「兄上!冗談も…」
「冗談ではない。彼女は本来ならば俺の婚約者になる予定だったが、王太子妃候補として選ばれた故に、俺との婚約はなかったものとされた。元に戻っただけだ」
「元に戻ったって…」
「王家は彼女を手放したくないんだろう。お前との婚約が解消になった以上、相応しいのは血筋から言っても俺だけだろう?」
言っている事は正しいけど、聞いてないわ。
それに、お父様は納得しているの!
「約束しただろ…」
「え?」
「共に国を守ろうと」
耳元に囁かれた声。
そしてこの台詞。
――貴方は誰?
どうして私と彼しか知らない約束を知っているの?
「それとも俺では彼女に相応しくないか?」
「そっ…そのような。滅相もございません」
「お似合いですわ!」
ここで相応しくないなんて言えば角が立つし、絶対攻略不可能と言われていた北の大陸を落としたのだから。
英雄も等しいいのだから。
公の場でジークベルトを批難する事は陛下を侮辱するも同然だった。
「だそうだぞ?アルデンテ侯爵」
「まったく、貴方と言う方は」
「アリスティア嬢、この俺の心を攫っておきながら逃げる事は許さない…ゆっくりとそなたを振り向かせる」
遠回しに私は絶対にジークベルト様に心を寄せるとでも言いたげだった。
「お戯れを…」
「戯れではない」
距離を近づけ私の顎を掴む。
乱暴なのに、その手は優しかった。
「さぁ行くぞ」
「なっ…」
手を引かれ強引なエスコートを受けながらも何故か逆らえる気がしなかった。
ふとお父様と目が合ったが親指を突き上げていた。
何で?
リィナを見ると。
やっぱり親指を突き上げている。
一体誰か説明して!
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