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プロローグ
しおりを挟むこの世界は愛で溢れている。
愛とは目に見えない。
形がないから解らないけど、その愛はどんなものだろうか。
人は愛を求め、理想を抱く。
物語で描かれている真実の愛とはどんなものか。
「真実の愛なんて、不確かだ」
「貴族ですから愛よりも利益と言う事ですか?」
「愛を否定している訳じゃないが理を無視した愛は、ただの身勝手だ」
まだ幼かった頃。
愛がどんなものか知らなかった私にあの方は言った。
「例え決められた関係でもそこから愛は芽生える。真実の愛ではなく、育まれた愛…永遠の愛の方が確かだ」
「育まれた愛」
「絆で結ばれた愛の方がずっと良いと思わないか?」
「はい!」
小説のような愛よりも、支え合える愛の方が素敵だと思った。
でも、真実の愛というものがとても厄介な物である事を私は10年後に思い知らされた。
人は愛によって狂い、おかしくなるのか。
17歳の誕生日。
私は婚約者である我が国の王太子殿下、ティエゴ様によりとんでもない事を告げられた。
「真実の愛を見つけたんだ」
「は?」
「君との婚約を解消したい」
大事な話があると、王宮内の庭園に呼ばれた私は耳を疑った。
「真実の愛とは…」
「僕は運命の人に出会ったんだ。彼女を妃に迎えたい…君とは婚約を解消したいんだ」
「待ってください。私と殿下は…」
真実の愛とは言われても。
私達の婚約は政略結婚でありながらも愛情はないと?
「私達の間に情はないと?」
「違う、僕は君への愛情はある。だけどその愛情は恋じゃない…家族愛にすぎないんだ」
「それの何処が行けないのですか」
私達の婚約は政略的な者であったが、互いに国を守る立場同士。
顔合わせの日にも殿下はおっしゃってくれた。
『君と愛し合いたい』
決められた結婚でも互いに愛を育もうと言ってくれたからこそ私も務めて来た。
「君は恋をしたことがないから解らないだろうが…愛と恋は違うんだ。僕は真実の愛を見つけてしまった。だから君に解って欲しい…君なら解ってくれるだろ?」
解ってくれるだろ?と言われても。
私は婚約者である前に家臣でしかないので拒否権はない。
「承知いたしました」
「ありがとう。君なら快く了承してくれると思っていたよ」
快くなわけがない。
私はずっと王太子妃として厳しい教育を受けて来た。
だけど、この国の王太子殿下の命令に逆らえるはずもない。
だから了承するしかなかった。
私は愛を結ぶことはできなかったのだから。
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