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第三章

53捨てられた男

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公の場で宣言を行ったエミリーは大人しく騎士に従い別の馬車に入れられた。
対するランドルフは放心状態にあった。


「何故だ…どうして」

「あんな女の所為で!」


すっきりした表情をしているエミリーはこれから先困難が舞っているだろうが、きっと立ち直るだろう。


そんな予感があったが、ランドルフは未だに現実を受け入れられないだろう。

「連れて行きなさい」

「「「はっ!」」」


カナリアはあれだけ言っても変わろうともしないランドルフに何か言う気はなかった。


「待ってくれ!頼む…」


「エスター!お願い」


無理矢理連行される二人は未だに誰かに助けてもらおうと思っていたが誰も助ける気はなかった。


「ちょっと何をするの」

「捨てた男の末路。今度の見出しはこれで決まりね」

アイーシャは写真を取る。


「小説が書けるわね」

「真実の愛の果てか?」

「ええ、喜劇になりますわ」


ニヤニヤ笑うカナリアは小説にして売りさばけば売れるのではないか?
新しい娯楽としていいと思ったのだ。



「止めてくれ…もう」

「ああ…」


二人はもう何も見えなくなっていた。
味方はだれ一人おらず祖国では近日中に晒し物になるだろう。

既に堕ちる所まで堕ちているが、罪人となって日陰で生きて島流しになるなんて耐えられなかった。


そして妻にも捨てられたとなれば…。


「早く乗れ!」

「止めてくれ!」

「嫌よ…嫌よ!」


騎士に無理矢理馬車に押し込まれたのだった。


「最後の最後まで情けないわね」

「あの親子は共に足を引っ張り合うだろ。死んでも変わらないな」


ある意味あの二人は似た者同士かもしれない。
エミリーは縁を切れて良かったかもしれないが少し遅すぎたかもしれないと思った。



「皆さん、ご協力感謝しますわ」


「いいえカナリア様」

「何時でもおっしゃってください」


茶番劇につき合わせたお詫びもかねて今日は貸し切りとして代金を支払う約束をした後に宴が開かれる事となった。


「今日は思う存分飲まなくてはね」

「お母様、今日は無礼講ですものね」

アリエルもようやくすべてが終わったと羽目を外しワインを楽しんだのだった。



その数日後、視察も終えて一行は無事に帰国した。
その後、ランドルフ達は島流しになるもエミリーは真面目に働き二人程の罪はなく数か月後には更生の見込みがあると判断された。


対するランドルフとライアンは変わらずだったとか。



その後彼等がどうなったかはカナリア自身も知る事はなかった。


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