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第三章
47お仕置き
しおりを挟む同じようにも見えても二人は対照的だった。
「エスターは誠意を見せました。だから彼は幸福になった…それまで苦難の連続だったけど」
「何が苦難だ」
「貴方が知らない所で彼はどれだけ苦労したと思ったか」
何を言ってもランドルフに響かない。
他人の良い部分しか見ておらずエスターの苦悩なんて知りもしなかった。
「もしエスターが私の婚約者でも、貴方のような無様な生き方はしないでしょうね?だって何もしない何も見ない。自分の罪は認めない」
「違う」
「貴方は誰も愛していない。都合が悪くなったら逃げるような甘ったれよ…そんな甘ったれた男には相応しい場所を与えてあげるわ」
既に最後の砦となるこの店でも反省の色も見せないで態度を改める事もなかった。
「真実の愛とやらを貫きなさい?」
「どういうことだ」
今さらになって何故その言葉が出て来るのか解らなかった。
「お前の妻と母親は今牢屋だ」
「え?」
「馬を盗み無銭飲食をした罪に他にもある」
エンディミオンは令状を突きつける。
二人は既に捕らえられ牢獄に入れられていた。
「牢屋なら食事は出るし寝る所に困らない。今度こそ真実の愛を貫け良いだろう」
「そんな…」
「一年牢屋で過ごしてその後は寒い北の領地でトナカイに囲まれて過ごしなさい。何もない場所でね?」
ある意味地獄だった。
例え食事は貧相でも、今の環境の方がずっとましだ。
「待ってくれカナリア…ぐあぁ!」
「気やすく呼ぶな。汚らわしい」
ヒールで踏みつけ見下すような視線と共にカナリアは告げた。
「ヒールでもお舐め」
「カナリア…何処でそんな言葉を」
「先月劇場で」
「二度とそんな芝居を見るな」
王弟殿下の妃としてはアウトだったが。
「ぎゃああ!」
「鞭を出すな」
懐から鞭を出し、ランドルフを鞭で叩く。
「悪人には鞭。これがエンゼル流と聞きました」
「誰にだ?母上か?母上だな!」
取り出した鞭には王家の紋章が刻まれており、差し出したのが誰が見ても解る。
「料理長、副料理長。従業員の皆様ご苦労様でした」
「「「ははぁー!」」」
ランドルフをズタズタにした後に見守っている従業員達に笑顔を見せると彼等は土下座姿勢になる。
「カナリア様の為なら何時でも」
「この店はお嬢様に助けていただいたからこそあるのですから」
「なっ…そんな」
そもそもランドルフがこの店で働けたのは影でカナリアが暗躍したからだったのだがランドルフはそんな事も知る事もなかったのだった。
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