上 下
107 / 115
第三章

47お仕置き

しおりを挟む


同じようにも見えても二人は対照的だった。


「エスターは誠意を見せました。だから彼は幸福になった…それまで苦難の連続だったけど」

「何が苦難だ」


「貴方が知らない所で彼はどれだけ苦労したと思ったか」


何を言ってもランドルフに響かない。
他人の良い部分しか見ておらずエスターの苦悩なんて知りもしなかった。


「もしエスターが私の婚約者でも、貴方のような無様な生き方はしないでしょうね?だって何もしない何も見ない。自分の罪は認めない」

「違う」

「貴方は誰も愛していない。都合が悪くなったら逃げるような甘ったれよ…そんな甘ったれた男には相応しい場所を与えてあげるわ」


既に最後の砦となるこの店でも反省の色も見せないで態度を改める事もなかった。


「真実の愛とやらを貫きなさい?」

「どういうことだ」


今さらになって何故その言葉が出て来るのか解らなかった。



「お前の妻と母親は今牢屋だ」

「え?」

「馬を盗み無銭飲食をした罪に他にもある」

エンディミオンは令状を突きつける。
二人は既に捕らえられ牢獄に入れられていた。


「牢屋なら食事は出るし寝る所に困らない。今度こそ真実の愛を貫け良いだろう」

「そんな…」

「一年牢屋で過ごしてその後は寒い北の領地でトナカイに囲まれて過ごしなさい。何もない場所でね?」


ある意味地獄だった。
例え食事は貧相でも、今の環境の方がずっとましだ。


「待ってくれカナリア…ぐあぁ!」

「気やすく呼ぶな。汚らわしい」


ヒールで踏みつけ見下すような視線と共にカナリアは告げた。


「ヒールでもお舐め」

「カナリア…何処でそんな言葉を」

「先月劇場で」

「二度とそんな芝居を見るな」


王弟殿下の妃としてはアウトだったが。


「ぎゃああ!」


「鞭を出すな」


懐から鞭を出し、ランドルフを鞭で叩く。


「悪人には鞭。これがエンゼル流と聞きました」

「誰にだ?母上か?母上だな!」


取り出した鞭には王家の紋章が刻まれており、差し出したのが誰が見ても解る。


「料理長、副料理長。従業員の皆様ご苦労様でした」

「「「ははぁー!」」」


ランドルフをズタズタにした後に見守っている従業員達に笑顔を見せると彼等は土下座姿勢になる。



「カナリア様の為なら何時でも」


「この店はお嬢様に助けていただいたからこそあるのですから」


「なっ…そんな」


そもそもランドルフがこの店で働けたのは影でカナリアが暗躍したからだったのだがランドルフはそんな事も知る事もなかったのだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

【完結】今夜さよならをします

たろ
恋愛
愛していた。でも愛されることはなかった。 あなたが好きなのは、守るのはリーリエ様。 だったら婚約解消いたしましょう。 シエルに頬を叩かれた時、わたしの恋心は消えた。 よくある婚約解消の話です。 そして新しい恋を見つける話。 なんだけど……あなたには最後しっかりとざまあくらわせてやります!! ★すみません。 長編へと変更させていただきます。 書いているとつい面白くて……長くなってしまいました。 いつも読んでいただきありがとうございます!

平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?

和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」  腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。  マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。  婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?    

私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな
恋愛
 大好きだった人。 一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。  なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。  もう誰も信じられない。

婚約者に忘れられていた私

稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」  「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」  私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。  エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。  ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。  私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。  あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?    まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?  誰?  あれ?  せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?  もうあなたなんてポイよポイッ。  ※ゆる~い設定です。  ※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。  ※視点が一話一話変わる場面もあります。

【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。

たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。 わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。 ううん、もう見るのも嫌だった。 結婚して1年を過ぎた。 政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。 なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。 見ようとしない。 わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。 義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。 わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。 そして彼は側室を迎えた。 拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。 ただそれがオリエに伝わることは…… とても設定はゆるいお話です。 短編から長編へ変更しました。 すみません

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

飽きたと捨てられましたので

編端みどり
恋愛
飽きたから義理の妹と婚約者をチェンジしようと結婚式の前日に言われた。 計画通りだと、ルリィは内心ほくそ笑んだ。 横暴な婚約者と、居候なのに我が物顔で振る舞う父の愛人と、わがままな妹、仕事のフリをして遊び回る父。ルリィは偽物の家族を捨てることにした。 ※7000文字前後、全5話のショートショートです。 ※2024.8.29誤字報告頂きました。訂正しました。報告不要との事ですので承認はしていませんが、本当に助かりました。ありがとうございます。

処理中です...