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第三章

41弟

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過去の面影は全くなかった。
老け込んで顔つきも変わってしまったランドルフに見るのも辛かった。

「何故…」


「反省の色がないわね」


注意されながらも反省するどころか不貞腐れた表情をしているランドルフにミリアは軽蔑の視線を向ける。


「新人で下っ端である自覚がないわ」

「ミリア、知っていたのか」


「ええ、旅に出る前に聞きました」


知らされていなかったのはエスターだけだった。


「貴方に言えば反対するでしょう?」

「当たり前だ」

「だから言わなかったんです」


ランドルフの引き起こした失態は今でも許していない。
何年過ぎても許せないのだ。


「エスター、落ち着いてください」

「しかしカナリア様…」


いきなりで落ち着けというのも無理があるが、ここに来た本当の理由は過去を清算する為だった。


「貴方も気にしていたでしょう?ランドルフとライアン夫人の行方を」

「気にしていた…だが安否確認と言う意味じゃない」


エスターは二度と会う気はなかった。
縁を完全に切りもうやり直す気はなかったのだが、気になっていたのは本当だ。



「ですからこの目で最後にはっきり見ようと思いまして」

「最後?」

「ええ、彼が更生したかどうか」


「カナリア…」


(絶対嘘だろ!)


更生したなんて思ってもない事を言うカナリアにげんなりする。


「本気で思っていないでしょう」

「ええ、あの男が更生するならこの店で働いていないでしょう。ここは墓場でもあるんですから」


人材の墓場。
過去にそう言われていた。


「墓場とは…」

「職業紹介状で紹介された働き先で使い物にならない人間や罪人等を受け入れる最後の砦」


「そこまで…」


ランドルフがここまで堕ちてしまっているとは知らなかった。


「エスター、現実から目を逸らせないで」

「え?」

「もう過去を切り捨てるべきだわ」


未だに過去に苦しむエスターをミリアは知っていた。
だらこそランドルフに合って最後に話をすべきだと思ったカナリアの配慮だったが。


「カナリア、場合によっては最悪な結末になるぞ」

「私は既に和解する気はありません」

「だろうな。むしろ逆だろうが…エスターは」

「弟…ですから」


この中でランドルフを切り捨てたくても切り捨てられない。
踏ん切りがつかないのは兄弟であるから。

そして、エスターが奮闘している事を知っていた。



「まだ、言いたいことを言っていないのでしょう」

「ミリア…」

心の中の霧を晴らす為にも必要だった。

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