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第三章

40里帰りの前に

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久しぶりの里帰りは楽しいものではなかった。
少なくともエンディミオンにとってはだ。


「久しぶりに食べるこの焼き鳥は最高ね」

「本当、この味だけはエンゼル王国では味わえませんわ」



カナリアとミリアは焼き鳥を立ち食いしていた。


王都に到着する前に田舎に泊り、宿を取って自由な時間を過ごしていた。

「しかし良い所ですね」

「ああ…ここは」


王都に入る前にこの領地に連泊して王都に向かう予定だが、エスターはわざわざこの領地に来た理由が阿解らない。

「明日はとっておきのレストランがありますの」

「レストランなら何も町中でなくとも」


カナリアが選んだレストランは町の中にあるのだが、態々選ぶ程のレストランではない。
貴族ではなく平民や商人、特に男性客が多いレストランでは危険だと思うエスターだったのだがカナリアが不敵な笑みを浮かべる。


「是非あのレストランにお二人を招待したと思いまして。値段も手ごろで味も良いしサービスも素晴らしいのですわ」

「はぁ…」


「レストランカンパルネですか」


カナリアが贔屓にするぐらいだから余程有名なのかとも思ったが、聞いたことがない。

「そのレストランの料理長は路頭に迷った人間を拾って従業員に迎える方ですの」

「そうなんですか?」

「職人気質でありますが面倒見が良いのですわ」




そして翌日。
町で宿を取って昼前にレストランに向かう事になる。


「ここですわ」

「まぁ、なんというか」

「下町レストランですか」


決して大きなレストランではなかった。


「おい!何してやがる!」

「皿を急いで下げやがれ!」


従業員のほとんどが男で、忙しなく走り回っているウェイターに罵倒を浴びせる料理人にエスターは何故?と思った。


「ここで食事をするのはどうかと」

「そうなんだがな…」


エスターは王弟殿下の妃であるカナリアが食事をするのは望ましくないと思いながら中に入ろうとろするも。


「おい新入り!ゴミの分別もできないのか!」

「ゴミなんて燃やせば同じだろう」

「馬鹿か!飲食店で働くならそれぐらい理解しろ」


焼却炉の方で年配の従業員が怒鳴る声が聞こえこっそり盗み見すると。


「カナリア様」

「言わなくても解っているわ」

「ならば何故…いいえ、聞くまでもないのですが」

エスターはダラダラと汗を流す。
今見たものを忘れてしまいたいと思った。


何故ならこの店で中年の業員に怒鳴られているのはすっかり変わり果てたランドルフの姿だったからだった。




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