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第三章

18縁の切れ目は妻

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サステナルブル家は妻のおかげで近所付き合いが円滑にできていた。
夫婦で自営業をしていれば妻は夫を支え仕事が円滑に進むように努めるのは暗黙の了解だったが、当然だと思ってはいけなかった。


妻が夫を支えるのが当たり前。
キュロスの傲慢な考えは父メジャーと同じだった。

メジャーはリタを当然のようにこき使って来たが、育児に関しては一切の関りを持たなかった。
その癖、キュロスが何か失敗すればまず言ったのは。


「母親に似た所為だ。出来損ないが!」


仕事の憂さ晴らしにもリタを責めて母親として失格だと責めていた。
しかし責めた事を忘れ次の日は何食わぬ顔をしている。


キュロスはそんな父親が嫌いだったが、成長過程で自分が父親に怒られるのはリタが出来損ないだと思うようになった。


自分は負け組にはならない。
絶対に勝ち組になってやると言い聞かせていた。


しかし…



「アンタ達は本当に似た者親子だね」

「は?」

「キュロス、今のアンタはメジャーにそっくりだよ。アンタが嫌っているメジャーそのものだよ」


大嫌いの父親とそっくりだと言われてカチンとするも。


「まぁ、もう関わる事はないだろうから忘れてくれても良いよ」


「何を…」


「私達は牧場をたたんで王都に行くことにした。嫁夫婦が同居しないかって言ってくれてね。土地も売ることにした…アンタ達との付き合いもこれっきりだしね」


「待ってくれ!そんな」

「元よりリタとセリアが村を出る時点で言うべきだったね」


「モリアも息子夫婦の元に身を寄せる事になったらしいからね…何かあっても頼らないでくれよ」



口々に縁を切るやもう関わらないと言われキュロスは絶句した。
共同事業を辞めてもこれまでの付き合いがあるので心のどこかで安堵していた。


(まずいぞ!なんとしても引き止めないと!)


キュロスは多額の借金をしていた。
彼女達が土地を手放せば借金取りはどんな手を使ってでも返済を迫るだろう。


「そんな…」

「私達も歳を取った…だけど、これまでセリアが色々面倒を見てくれたからこそアンタの事を大目に見て来たが」

「あんなに良い嫁を捨てるなんてアンタは最低だ!」

「もう二度と会う事はないだろうけど、王都で見たら覚悟しな」


そのまま去って行く彼女達に手を伸ばすも振り返る事はなかった。


立ち往生するキュロスに声をかける人間は誰もいなかった。

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