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第三章
12正反対の女性
しおりを挟む項垂れるエンディミオンはその後も胃が痛いと感じながらも薬が効いたのでその日内に仕事に戻り、夜になった頃。
一行は帰国した。
そして大所帯で挨拶に来たのだった。
「ご機嫌麗しゅうございます王弟殿下、カナリア妃」
「良く来てくれた」
「どうかお楽になさってください。お義兄様もお義姉様もお疲れ様でした」
二人を気遣うも。疲れた表情一つ見せずに笑顔だった。
「いいえ、私達は楽しい旅でしたわ」
「ああ、久しぶりの旅行を堪能で来たぞ」
「兄上…」
アレーシャに気づかれないようにエンディミオンは睨みつけた。
何の為に同行したのかと恨み言の一つでも言ってやりたかったぐらいだ。
「セリア様、この度は大変でしたね」
「いいえ!そのような…カナリア様には姉がどれ程お世話になった事か…私は直接お言葉を交わしたことはございませんが、姉から良く聞いております」
「そうでしたか」
(やはり良くできた方ね)
身分差により委縮するか媚びを売るか最悪嫉妬の感情を向ける者も少なく無いのだが、セリアは心からの感謝を述べられる。
同時にカナリアに対して一切の負の感情を感じなかった。
どんなに優しい人間でも女性同士では張り合いを持ってしまうのだが。
(ある意味ミリア様以上に聡明な方なのかもしれないわ)
養女に迎えられたと聞くので心の中では少し心配をしていたが、セリアを見る限り心配はなさそうだった。
「ミリア殿は我が国には絶対に必要な方だ。我が国では少子高齢化が進んでいる…故に彼女の力は必要不可欠だ」
「故に私が無理を申しました。この度の事は私にも非がございます。申し訳ありません」
カナリアとエンディミオンはミリアが受けた精神的苦痛は自分達にも非があると詫びを入れるも、セリアは首を横に振りました。
「今回の事はお二人の所為ではありません。むしろ姉を救ってくださった事を感謝しております」
「セリア様…」
「感謝する事はあれど恨むなどありえません」
きっぱりとした性格なのか断言するのだが。
「これセリア!無礼ですよ」
「お義母様…」
傍でセリアの息子を抱いていた姑が咎める。
その反対側でアルソート夫人も表情を引きつらせていた。
相手は王族であるのに無礼だと思った二人は厳しい目を向けるのだが、カナリアは笑みを浮かべる。
「どうかお気になさらないでください。私は今でもミリア様を姉だと思っております」
「嬉しゅうございます」
「できましたらセリア様とも親しくなりたいと思っております」
セリアのような女性を好ましく思い快く受入れるカナリアはひとまず安心したのだった。
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