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第二章

16予兆

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エスターとミリアを呼び出してしばらく過ぎた頃。



アレーシャは妊娠した。


「本当ですの!間違いなくて!」

「はい、間違いございません」


現在宮廷医師により検査を行い、アレーシャの妊娠が確実なものとなった。


「おめでとうございますアレーシャ様」

「ありがとうございますカナリア様。貴女のおかげです」


此度めでたくアレーシャは妊娠できたことを皆喜んだ。


「いいえ。ミリア様のおかげです」

「まさか体質が私と同じとは思いませんでした」


ミリアは長い間、子供が出来ない事に悩んでいたが、体質に問題が生じていた。


「子供が出来にくい体質であるのですが、以前受けた治療法ならもしかしたらと思いまして」

「背丈や体質も似ていたので、それだけではと思いましたが」


長い時間をかけてミリヤが子を授かる事が出来た治療法がある。
子供が出来るかどうか解らないがその治療を受けた経験者が傍にいる、何より子供が出来ない辛さを一番知る人がいた方が良いと判断した。


「私も子ができず辛い思いをしました」

「ミリヤ様」

「だけど、諦められませんでした」


貴族社会では女性は子供を作る事を第一とされている。
子供出来ないと役立たずと言われ、世間でも冷たい目で見られるのだから。



「ですが盲点でしたわね。男性側に問題があったとは」


「ぐっ!」

部屋の隅っこで小さくなっているレオンハルトを睨みつけるセラフィーヌ。


「まったく盲点でしたわ。男性側にも問題があるなんて…私はそんな甲斐性無しに産んだ覚えがなかったのですが、夫は草食男子でしたものね」

「母上、これ以上言ったら兄上の精神は潰れますよ」

「何が獅子ですの?その異名を返上なさい」


こればかりは誰の所為でもないのだが、男尊女卑の世の中では子供が出来ないのは常に女性の所為だった。


「ですが私達はまだ幸せかもしれません」

「それはどういう事ですか」

ミリヤの言葉にきょとんとするアレーシャ。


「子供を産む力がない女性の中には辛い不妊治療や、人工的方法を使って子を授かります」

「それは…」

「特に辛いのはその治療で夫婦の関係が壊れることもあります」


夫以外の子を作るという選択になる。
肉体関係はなくとも夫婦関係は壊れてしまう可能性が高かった。


「それでも子を望む方もおりますし。不妊治療は確実に子を身ごもれるわけではありませんし」

「そうだったんですね」


アレーシャもミリヤも恵まれていた事を改めて思い知る。
同時に子供を得るというのは本当に大変なモノだと改めて思い知るのだった。


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