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第二章
14最低の結婚式
しおりを挟む招待客は身内だけ。
貴族の知人はほとんど来ておらず、学生時代の友人と恩師ぐらいだった。
彼等も来たくて来たわけじゃない。
義理もあって着たのだが、そこには友情ではなく打算的なモノが大きかった。
「ランドルフ…」
「久しいな」
「ああ、来てくれてありがとう」
ぎこちなく笑う友人に愛想笑いをするも互いに表情が引きつっていた。
「趣味が変わったか…」
「ああ、これは」
結婚式で着る男性側の正装は決まっている。
生地も上質な物が多かったが、ランドルフの着ているものは型崩れの物で、しかも上質な生地とは言い難い。
対するエミリーのウェディングドレスは。
「随分と変わったウェディングドレスだな」
「ああ、でも斬新で良いかと」
裾が短く足元が晒されている。
短い裾は上からレースをかぶせてはいるが、通常は足元が見えないようにするものだった。
ヴェールもレースではない。
平民でもう少しマシだろうと思いながらもこの場で冗談を言う余裕はない。
「じゃあ…」
「ああ」
友人と別れた後に教会に向かう事になったが、挙式でもトラブルは相次いだ。
二人の結婚の誓いの場では。
「ではこちらにサインを」
「はい、エミリー」
「ええ…」
互いの名前をサインする時に。
「きゃあ!」
ペンで自分の名前を書くとペンからインクが漏れてしまう。
「大丈夫だ…これぐらい」
バキッ!
「筆が…これまで多くの新郎新婦が使った物です。折れた事は一度もない万年筆が折れるなど」
神父は真っ青になり不吉だと思った矢先。
窓から突風が舞い込んだ。
「きゃああ!風が!」
「雨だ…今日は雨が降る予定はなかったのに。大雨だぞ」
「不吉だ。なんて不吉なんだ!」
二人の挙式は最悪な物となった。
まるで神がこの結婚は認めないと言いたげだった。
無理矢理挙式は進められるも、外は嵐となり野外の披露宴は中止となった。
教会側の好意で場所を提供してもらい礼拝堂を借りることになったが、場所が場所なだけに料理は更に貧相なものばかりで無理して参加した招待客は不満が募った。
特にエミリーが招待した友人は…
「最低ね」
「貴族の独身男性に会えると思ったのに」
「仕事休んでまで来たのに、こんなしょぼい披露宴に呼ばれて最悪だわ」
披露宴の席ではずっと文句ばかり言っていた。
彼女達はキャスティ商会で働いていた従業員だったが途中で別の邸のメイドとなったのだが、今回の噂を聞いて結婚式に参加した。
お零れがあると思ったが、めぼしい独身男性はいなかった。
ランドルフの友人は既婚者でもあるので、ネタう事も出来ないので当てが外れ怒りの矛先はエミリーに向けられた。
「ぼったくりじゃない」
「もういいわ。帰りましょう」
「私も」
披露宴の途中で帰るのはマナー違反だが、構わず彼女達は席を立ち、他にも帰りたそうな表情をされ最悪な結婚式は既にお葬式モードとなり最低な結婚式となった。
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