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第二章
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しおりを挟む貧の良い馬車が大通りを通り、オイシス家の邸の前に止まる。
「ここね。随分と小さなお邸です事」
「ええ、奥様。本当にこんな」
「いいわ。最後ですから」
一人の貴族夫人は侍女に命じて邸の前に馬車を止めさせる。
「あっ…あの」
邸の前で掃除をしてい侍女が戸惑う中。
「ランドルフ・オイシス様はいらっしゃるかしら?私はハッシュベル伯爵家当主です」
「えっ…」
「ご挨拶に参りましたの」
「はっ…はい!ただいま」
侍女は大慌てでその場を去って行く。
他の使用人もじろじろ見ているだけで、挨拶もしなかった。
「なんて無礼なのかしら。奥様に対して」
「所詮は下級貴族…だけど、ここまで使用人の躾もできていないなんて。まぁあの女の娘にはちょうど良いわね」
「ですが!」
「いいのよ」
未だに不満そうにする傍付きの侍女を嗜めながらしばらくして他の使用人が来て邸の応接室に通された。
その頃ランドルフ達は。
「ハッシュベル伯爵家の当主?」
「はい、ランドルフ様にご挨拶されたいと」
「うちは男爵家だ。伯爵家と付き合いはないぞ…それにハッシュベル家は大貴族だ。なのに…」
「奥様です」
「え?」
真っ青な表情をするエミリーは震えて顔を俯かせながら告げた。
「ハッシュベル伯爵家の当主は父の奥方様です」
「そうだったのか…」
「まぁなんて事なの!」
真っ青になるエミリーとは反対にその会話を聞いていたライアンが乱入して興奮する。
「きっと娘のお祝いに来たのではなくて?妾腹とは言えど、娘である事は確かだし。ランドルフに挨拶に来たのね!きっと私達とも今後お付き合いをしたいとのことだわ」
「そんなはずは…」
エミリーはありえないと思った。
ハッシュベル伯爵家ではいないものとして扱われ、母親は離れに追いやられていたのだから。
「奥様は私を良く思っていないはずです」
「表向きはそうでしょう?愛人の子供だしね」
「母上!そんな言い方を…」
「そんな事よりも早く出迎えをなさい」
ランドルフは唇を噛みしめる。
(そんな事?母上にとってはそんな事なのか)
悪気無くエミリーを侮辱している事に自覚がない。
「何をしているの!早くしなさい」
「はい…エミリー」
「私は行きたくないわ。奥様に会いたくない…」
怯えた表情のエミリーは挨拶なんかしたくないというも。
「そんな真似は許しません。オイシス家の嫁になる以上は我儘は許しません直ぐに着替えの準備をなさい」
「「「はい奥様」」」
侍女達はライアンの命令に逆らう事は出来ずエミリーの願いは簡単に却下された。
対するライアンはコネクションを失い、後ろ盾もなくした状態だったので天の助けと思い浮かれていた。
世の中そんなに甘くない事を未だに理解できずにいたのだ。
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