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第一章

11エンディミオンの智恵

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時は少し遡る事、数時間前。


「今回の事はある程度の裁きは必要です」


「どうするのです」

「カナリア嬢、貴女の王家に対する忠誠は素晴らしい事です。ですが、裁きを受けるべきです」


話し合いの中、カナリアが婚約破棄となった理由を話す事になった。
簡単にざっくりだが、エンディミオンに隠し事をしてもいずれバレるのでカナリアは隠す事はなかった。


「貴女が傷ついていないはずはない」

「そんなことは」

「自分の感情を隠す術を持っていても、傷つかないわけじゃない」


ランドルフを愛していたわけではない。
それでも婚約者として、夫として支え共に協力していく覚悟を持っていました。


「私は愛よりも理を重んじて来ました」

「ああ」

「だけど、私は…」


愛情を一切持っていないわけじゃない。
情を持って、誠意を持って接して来たつもりだった。


ランドルフには全く伝わらなかったが。


「私はどうにも可愛い気がなく、感情を表に出すのが下手なようで」

「それが何だというんですか」

「え?」


そっと傍に寄り添う手を握るエンディミオンは優しく言葉をかける。


「私も決して器用ではありません。ですが、そんな事は理由になりません。貴女の元婚約者は言葉以外に貴女に誠意を示しましたか?婚約破棄等せずに解消して償いをしましたか?」

「いいえ」

「男としてあまりにも無責任です。貴女は優しい人だ」


王家に泥を塗りたくなかった。
だからこれ以上騒ぎを大きくしないために法的手段に出ることもせず、オイシス家に何か求める事もなかった。


でも…。


せめて謝罪ぐらいは。
悪い事をしたと誠意ぐらい見せて欲しかった。



「ウルリーケ様、私は相応の償いが必要かと」

「勿論です」

「カナリア嬢が危惧しているのは王家にこれ以上迷惑をかけない事を最優先です。ならば、我らは何もせず尚且つ彼等に少しお灸を据えてやればよいのです」


「どうするのです?」

ウルリーケも圧力をかけようと考えていた。
ただしやり過ぎれば、社交界で復讐にカナリアが何かしたと噂をながされる。

そうなればランドルフの思う壺ではないかと思った。

「人の良心を利用すると痛い目に合う事を教えてやるべきです。私に考えがあります」

「え?」

「まずは、キャスティ家に連絡を取ってください。その商会に協力を頼みます…まず断れないでしょうし、断る選択はないでしょう」


「まさか!」

ウルリーケは直ぐにエンディミオンの考えに気づく。


「それから、キャスティ商会に顧問弁護士がいるなら彼にも計画に協力を…いなければ依頼を」

「いいえ、おりますわ」

「では彼にも計画の詳細を伝えてください。それからもう一つ」


腹黒い笑みを浮かべるエンディミオンは最高の復讐劇を考えるのだった。


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