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番外編
1元王子の末路①
しおりを挟む海に囲まれた小さな島国。
ここは流罪になった罪人を送られる島であるが、島の住人も住んでおり平和だった。
ただし、移動手段はすべて牛車だった。
移動手段の牛や、荷物を運ぶ為に驢馬を利用するので家畜の世話をするのも流罪になった罪人の役目だった。
現在、流罪になったオルヴィスはここで働いていた。
「モォー!」
「ぎゃああ!」
人に慣れている牛ではあるが、敵対心むき出しの人間に対しては興奮して襲って来る。
「何で襲って来るんだ」
「牛には優しくするべ。おめぇ、牛の世話も解らんのか?」
「ほんま阿保じゃな?子供でも知っとるべ」
島の住人は果物を収穫しながら呆れたように言っていた。
「だったら何とかしろクソ爺!」
「モォォォ!」
「何だ…わぁぁぁ!」
牛の飼い主である老人に対して罵倒を浴びせたオルヴィスは他の大人しい牛にまでも敵意を向けられた。
「何でだ!」
「モォォォ!」
一番体格の良い牛が群れを引きつれてオルヴィスを追いかけて回していた。
「あーあ…馬鹿だな」
「ほんま学習をしないのぉ」
住人達は呆れたように見ているだけで助けようともしない。
「まぁ三時間ほど走れば大人しくなるぞ」
「ああ、三時間程度だ」
(何だと!)
三時間も全力疾走させられたらるなんて耐えきれないと思ったが走った先には。
「ぶっ!」
「わぁ!」
動揺に羊に追いかけられていたのは父親だった。
「父上!何で」
「何所を見ているんだ!」
元国王だった。
「後ろ!父上後ろだ」
「クソっ!あの木に登るぞ!」
二人は互いに文句を言うよりも今はこの場の窮地を回避するのが先だと判断した。
「おいオルヴィス!手を貸せ」
「自分で登れ!」
オルヴィスは木に登るも年の所為か登れない父親に手を貸す事はしない。
「それが父親に向かって言う事か!」
「息子の為に身を差し出せ!」
何とも言えない光景である。
互いに我が身可愛さに相手を犠牲にして当然という考えを持っていた。
「醜いのぉ」
「本当に…」
島の住人はその醜い争いを見せられ視線を逸らした。
「貴族のお偉いさんは随分と薄情じゃな」
「ああ、家族の絆はないのか」
二人が他国の王族とは聞かされていなかった。
聞かされていたのは。
「何でも祖国で罪を犯して国から追放されたと聞いたが…」
「何をしたんじゃろうか。まぁ国から見捨てられるような悪い事をしたのかのぉ?」
大罪を犯した事で国から追放の身となっただけしか伝えられていなかったのだった。
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