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第二章
10聖女の歴史①
しおりを挟む――聖女。
それは女神からお告げを賜り聖なる力を与えられた乙女。
女神のお遣いとも言われていた。
しかしその聖女は誰もが思うような万能な存在ではなかった。
人である事は変わりなく傷つき、人を恨むこともある。
聖女になる過程で、闇に飲まれたり、憎しみの心が強くなると聖女は真逆の存在になる。
まるで光が闇に飲み込まれるように。
隠れた歴史や、伝承の中では聖女候補に選ばれながらも憎しみの感情に支配された者の末路は。
「聖女の末路が魔女…」
「正確には聖女になりきれなかったというべきか」
王宮内の図書室にて聖女に関連のある書物を読むジュリエットとアルフレッドは魔女について調べていた。
かつて地上に不幸を撒き散らした黒い魔女。
魔女の祖先と呼ばれる彼女は女性を依り代にして地上にて悪魔の種を撒き散らして不幸を産みだした。
「魔女と聖女は真逆の存在であるが…これを見てくれ」
「これは…」
古びた聖書の挿絵を見ると。
「似ているわ」
「記録者は既に亡くなっているが、聖女を知る者のようだな」
記述を読むと、魔女と聖女の事が詳しく書かれていた。
「聖女と魔女は決して異なる者ではない。元は一つだった人格である。光と闇が一つであると同じであるように元は一つだった」
「どういう事だ…一つとは」
古語で書かれた文字を指で辿りながら読んで行くと。
「時の権力者により聖女として召し上げられた少女の悲劇により魔女がこの地上に生まれた…」
「ジュリエット…それは」
「考えたくないけど」
ジュリエットはずっと考えていた事がある。
歴代の聖女は救った国の王子の妃になった者が大半であると言われているが、それは闇に封印された歴史ではないか?
貴族でもない平民の少女が簡単に王子と結婚して幸せになりましたなんてありえないのだ。
「隠された歴史の中に聖女が病で亡くなったと記されているが…どうにも」
「亡くなったのではなく亡き者にされたと考える方が正しいわ」
一時期オルヴィスを怒らせた事があったジュリエットは軟禁状態にあったが、それを利用してこっそり調べていた。
神殿で修業している間にも神官達も読めない古語で書かれた文献を入手したのだった。
「全てを見る事はできなかったけど…途中破けていたわ」
「破けた?」
「だけど、ここにある文献と照らし合わせて答えが見つかったわ」
時の権力者は聖女が利用価値が無くなれば消したのだ。
意に沿わなければ必要ないと理不尽な理由で国に尽くした乙女は利用され殺されたのだと察した。
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