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第一章
11初恋の人
しおりを挟む五年前に留学して戦争に巻き込まれて死亡扱いになったアルフレッドだった。
「遅くなってごめん。迎えに来たよ」
「アルフレッド」
これは夢なのだろうか。
生きていると信じたかったが既に周りは死んだとジュリエットに強く言い聞かせ言葉に出す事も許されなかった。
だから心の中で思う事にした。
アルフレッドを失った苦しみを消すように聖女としての勤めを果した。
「オルヴィス殿下、彼女は今さっき聖女でなくなった。婚約も破棄するとおおせだそうで」
「それは…」
「社交界で噂になっております。何より以前から聖女を一人、我が国にとおおせでしたね陛下?」
「それは…まぁ」
他国にも聖女の力は必要だった。
にも拘らず聖女が集まるのはバイルン王国ばかり十年前にある条約が加えられた。
長年援助している国に聖女を引退した乙女を引き渡す事。
勿論、無理強いはせず本人の意思を尊重するという名目でだったが。
「聞けばジュリエット殿は聖女としての全盛期は終わっているそうで」
「えっ…いや」
「聖女としても貴族令嬢としても行き遅れて貰い手が無いから仕方なく王宮に置いているとおおせでしたな?故に女王陛下が彼女を迎えたいと申されていてな」
(そんなことを言っていたのか…)
他の聖女と違ってもうすぐ20歳になる。
貴族令嬢として結婚適齢期を過ぎているので行き遅れと思われても仕方ない。
だが、そんなことを手紙にも書いて侮辱していたとは思わなかった。
公の行事ごとでは差別化をしてこれ見よがしに嫌がらせをされたり、ドレス等も型崩れのした物ばかり着せてはいたが。
「ふざけるな!今さら出てきて…死にぞこないの出来損ないが!」
オルヴィスは逆ギレをして暴れ出す。
「この女既に聖女ですらない!隣国に連れて行っても役立たずだ…娼婦にもならない女だ!」
「オルヴィス!」
ここが何処か忘れているオルヴィスは暴言を吐く。
「随分なお言葉ですね。聖女であった女性に…貴方はずっと彼女を辱め侮辱していたんですね」
「口を慎め無礼者め!貴様など…」
「口を慎むのは貴方ですぞ」
ハクセンス王国の使者が勲章を見せる。
「それは…」
「この方はハクセンス王国上陛下の側近にしてイシュタル侯爵閣下ですぞ」
「何だと!」
ハクセンス王国の中でも大貴族に当たるイシュタル侯爵家。
王族の血筋を引き、女王陛下の剣と呼ばれる一族としても知られている。
「馬鹿な…」
「私の祖父はハクセンス王国出身でしてね?伯父夫婦に養子に迎えられたんですよ。爵位も継承しておりますので」
「そんな…馬鹿な」
一国の王太子殿下と言えど、権限はない。
軍を動かせるも政治を動かせるのも国王であって、王太子にはないのだから。
「以前に私が伯爵以上の地位になればジュリエット様をくれてやると申されましたので頂戴致します」
不敵に微笑みながら過去のやり取りの書類を見せられその場に崩れるのだった。
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