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第一章

7ミーシャの変化

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王宮に戻るとイライザはオルヴィスと二人きりでお茶をしていた。
特に気にする事もなく部屋通り過ぎようとするも。


「ジュリエット、帰って来たのね」

「ミーシャ、どうしてここに?」


今の時間は結界を敷く時間だった。
ジュリエットは昼夜問わず、結界を維持できるようにできるのだが、ミーシャはジュリエット程の結界魔法の力はない。


その為決まった時間に祈りを捧げる必要がある。


「結界は…」

「そんなことはどうでも良いのよ」

「そんな事って!万一結界に…」

「少しぐらいいいわ。それよりもイライザが殿下とお茶を」

「別に良いのではなくて?」


ミーシャの言葉に不快感を感じながらも顔に出さないようにする。


「何を言っているの?オルヴィス様の婚約者として」

「候補に過ぎないわ。それに聖女を婚約者にするのはどうかと思うわ」

「えっ…」


聖女になって数年になるのに、他の候補。
特にイライザは未だに理解していないのかと頭を抱える。


「歴代の聖女様はその任がある間が結婚なんてできるのかしら?」

「何を言っているの?」

「聖女とは乙女を意味しているわ。清からかな体でないとダメなのではないかしら」


史実でも聖女は清い体を持ってなくてはならない。
役目を終えた後に王太子妃になったという記述はあるが聖女である間は男女の関係になれないだろう。


「そんなのカビの生えた昔の話でしょ」

「だとしても私は候補に過ぎないわ。私達は後宮の花じゃないわ」

「無礼よ!王太子妃になれるからって」


「どうしたのミーシャ?」


何時ものミーシャらしくない。
普段は声を荒げることが無いのにどうしたのかと心配になる。


「ジュリエットは何時もそうね。私と貴女は聖女として召し抱えられた時期は変わらないのに貴女だけが特別だった」


「ミーシャ?」


「私は平民で貴女は貴族だった。蝶よ花よと大切にされて…私は違うわ」


「落ち着いて。どうしたの?」


ミーシャが情緒不安定気味になっているのは明らかだった。


「貴女の心が乱れてるわ。そんなんじゃ祈りは…」

「触らないで!何もかもすべて持っているなら一つぐらいちょうだいよ」


(何もかも…)


全てを奪われて来たジュリエットにとって胸を抉るような言葉だった。


「何もかも…私にはもう何もないわ」

「嘘よ」

「愛する父も大好きな故郷も帰れない。残っているのは人々の為に祈るだけ…それだけ」


「何で…」

「ただ残りの人生を心静かに過ごし、願わくば出家をしたいの。大聖女なんて興味ないわ」


大聖女なんて聞こえはいいが、鳥籠の中で一生を過ごさなくてはならない。
貴族のご機嫌を取り象徴として生きる。


今までのように民の為に祈る事も許されない。


(私は王家の都合の良い人形じゃない!)


ずっと耐え忍んでいた。
聖女である事を誇りを持て、国の為に心を殺せ。


神官に、侍女に、そして。


(私の心を委ねるのはアルフレッドだけよ)


何があってもオルヴィスを愛する事はない。


王宮に来て数年間。
一度でもオルヴィスに心を許した事は一度としてないのだから。



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