上 下
3 / 72
第一章

1鳥籠の中で

しおりを挟む






明け方になり日が差し込み目を覚ます。
冷たい風が頬に当たり、朝一番の沐浴を行う事になっている。



冷たく肌に突き刺さるような冷水は針で刺されるような痛みに耐える。
聖女としての大事な修行。そして朝起きて感謝の祈りを捧げ、食事前に祈りを捧げる。


王太子殿下に会う前に祈りを捧げ。
そして私達は東西南北の聖女として祈りを捧げる。


ジュリエットは北を守る聖女として召し上げられた。
聖女として召し上げられ今では年長者であるのだけど、他の聖女はジュリエットよりも若々しかった。


派手好きな王太子殿下にとって私は既に花盛りを過ぎた聖女。
ただ国の対面の為にいるような存在だった。


「相変わらず辛気臭いわね、行き遅れ聖女様は」

クスクス笑ってジュリエットを馬鹿にするのは同じく聖女のイライザだった。
彼女は16歳で、裕福な子爵家令嬢だった。


ジュリエットのような田舎貴族とは正反対だった。
最初に聖女として選ばれたことを気に入らないと言っていた。


「祈りの時間よ」

「だぅたら一人ですれば?古臭い儀式をするしか能がないんだから。干からびた聖女」

「ちょっと…そんな言い方」

「何よいい子ぶって」


イライザを咎めるのは同じく聖女のミーシャ。
彼女は平民であるが上流階級出身で、彼女は私よりも年下だけどジュリエットよりも少し前に召し上げられた。

修業をしていた頃から仲良くしてくれていた。
他の二人とは異なり良く話す。


「馬鹿馬鹿しい」

「何ですって!」

「騒ぐなら部屋でしてくれる。煩いわ」


そして一人本を読んでいるのがルーアン。
最年少で常にクールな彼女は何を考えているか解らない。



「聖女様方、王太子殿下がお待ちです」

「「「はい」」」



祈りを終えて王太子殿下の元に挨拶に向かう。


だけど私にとっては一番の苦痛の時間で、無意味な時間だった。




「ごきげんよう。皆」

「ごきげん麗しゅうございます。オルヴィス殿下」

「今日も祈ってくれたんだな」

「はい、殿下の為に祈らせていただきました」



王太子殿下の為じゃなくて国の為に祈るのが聖女なのに、イライザの言葉を当然のように受け取る殿下に呆れてモノが言えない。


「皆の様子はどうだ」

「変わりございません」

「ちょっと、他に言い方はないの?殿下に対して失礼でしょ」

「いいんだイライザ。相変わらず可愛い気が無い女だな。他の聖女のように花が無い」

「申し訳ありません」


聖女というのは後宮の花とは違うというのに。
王の側妃候補と同じにされているのではないかと思うと不愉快だった。


「殿下ぁ!ジュリエット様は私達に厳しい事ばかり言うんです」

「何だと?君は筆頭聖女だろ!模範にならないくてどうするんだ」

「申し訳ありません。ですが…」

「言い訳をするな。聖女の癖に」


ジュリエットの言い分は何も聞いてくれない。
だから言葉を飲み込むしかなかった、私の言葉を…心の声に耳を傾けてくれる人はいなかった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪女の指南〜媚びるのをやめたら周囲の態度が変わりました

結城芙由奈 
恋愛
【何故我慢しなければならないのかしら?】 20歳の子爵家令嬢オリビエは母親の死と引き換えに生まれてきた。そのため父からは疎まれ、実の兄から憎まれている。義母からは無視され、異母妹からは馬鹿にされる日々。頼みの綱である婚約者も冷たい態度を取り、異母妹と惹かれ合っている。オリビエは少しでも受け入れてもらえるように媚を売っていたそんなある日悪女として名高い侯爵令嬢とふとしたことで知りあう。交流を深めていくうちに侯爵令嬢から諭され、自分の置かれた環境に疑問を抱くようになる。そこでオリビエは媚びるのをやめることにした。するとに周囲の環境が変化しはじめ―― ※他サイトでも投稿中

関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている

百門一新
恋愛
人族貴族の公爵令嬢であるシェスティと、獣人族であり六歳年上の第一王子カディオが、出会った時からずっと犬猿の仲なのは有名な話だった。賢い彼女はある日、それを終わらせるべく(全部捨てる勢いで)隣国へ保留学した。だが、それから数年、彼女のもとに「――カディオが、私を見ないと動機息切れが収まらないので来てくれ、というお願いはなんなの?」という変な手紙か実家から来て、帰国することに。そうしたら、彼の様子が変で……? ※さくっと読める短篇です、お楽しみいだたけましたら幸いです! ※他サイト様にも掲載

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」

笑うとリアルで花が咲き泣くと涙が宝石になる化け物の俺は、おひとり様を満喫しようと思っていたのに何故か溺愛されています。

竜鳴躍
BL
生前スタイリストだった俺は、子どもの頃からお人形遊びや童話が大好きな男の子だった。童話であるだろう?すごくかわいい子の表現で、バラ色の頬から花が咲き、目から宝石が落ちるとかなんとか。 それがリアルだったらどう思う?グロだよ?きもいよ?化け物だよ…。 中世ヨーロッパのような異世界の貴族に転生した俺は、自分の特異体質に気付いた時、無表情を貫くことにした! 当然、可愛がられないよね! 貴族家の次男でオメガとして生まれた俺は、おそらく時期が時期がきたら変態さんにお嫁に出される。 だけど、前世で男のストーカーに悩まされていた俺は、それは嫌なんだ。 なので、出入りのドレスショップに弟子入りして、将来はデザイナーとして身を立てようと思う! おひとり様で好きなこと仕事にして、生きていきたい。 なのになんでかな? どうして侯爵家に養子に行って公爵令息様が俺を膝に乗せるのかな?? 子どもだから?! でもドキドキする!心は大人なんだってば!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

素材採取家の異世界旅行記

木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。 可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。 個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。 このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。 裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。 この度アルファポリスより書籍化致しました。 書籍化部分はレンタルしております。

私が、幼なじみの婚約者で居続けた理由は好きな人がいたから……だったはずなんですけどね

珠宮さくら
恋愛
ルクレツィア・ソラーリは、物心がつく前から大人というものに期待していなかった。その代表が、両親だった。 それが一変したのが、婚約者となることになった子息の父親だった。婚約者が年々残念になっていく中で、それでも耐えていた理由は好きな人がいたからだったのだが……。

処理中です...