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第一章

プロローグ

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美しい大自然に囲まれ、大好きな人に囲まれ駆け回ったあの頃。


確かに幸せはここにあった。



「早く来てアルフレッド!」

「ジュリエット!貴族令嬢がそんな走るんじゃない!」

「大丈夫よ!」



幼かったジュリエットはただ平和なこの地で過ごし、何時か結婚して子供を産んで平凡な生活を送ると思っていた。


「見て見て、教会の鐘が鳴っているわ」

「ああ、今日も結婚式が行われているんだろうな」

「私も何時か海が見える場所で綺麗な花嫁さんになりたいわ!ね、アルフレッド」


幼い頃から大好きな人がいた。
少し年上だけど優しい兄のような存在のアルフレッド。


早くに母を亡くしたジュリエットは周りからも揶揄われ嫌味を言われていたが常に守ってくれたのが幼馴染のアルフレッドだった。



「俺は三男だから早く独立しないと大変だよ…出世しないと君と一緒になれない」

「私、できることないかな」

「俺が自分で認められないといけないから」


まだ幼かったジュリエットは知らなかった。

思いだけではどうにもなたない事がある。

この世は不公平な事が多すぎる。



「貴女は聖女の資格があります」


「えっ…」

「直ぐに王宮に来ていただきます。聖女となりその身を国に捧げるのです」


幼かった私はその意味を理解できなかった。


無理矢理腕を引かれた。


「痛い…いや!」

「すぐに召し上げの準備を」

「いや!行きたくない…放してぇ!アルフレッド!」


「ジュリエット!」


表情が変わらない人達。
まるで仮面を被った人のように見えて恐ろしかった。


「返せ!ジュリエットを…うっ」

「これ以上騒げば国家反逆罪と見なす」

「止めて!」


剣を持つ人がアルフレッドを殴る抑え込む。

「貴女も抵抗しない方がいいですよ。最初の祈るのがこの少年の遺体というのはいただけません」

何を言っているのかこの人は。
ジュリエットは耳を疑った。

「貴女は選ばれたのです。聖女として選ばれ、真の聖女となり王太子殿下に身も心も捧げるのですから」

「ふざけるな!ジュリエットを何だと!」

「お黙りなさい」

「ううっ!」


ジュリエットを助けようとするアルフレッドが抑え込まれる。


「手荒な真似をしないでくれ!」

「お父様!」


「伯爵閣下、これ以上抵抗するなら貴方も無傷でいられませんよ。国家反逆罪です」

「解っている。だが、手荒な真似をしない約束を破ったのは誰だ!」


武力行使をされ、成す術もなかった。


「お連れしろ」

「アルフレッド!」

「ジュリエット!」


対抗する事すら敵わず引き離される二人の悲痛の叫びが響く。


「無礼者が!」

「止めてアルフレッドに酷い事をしないでぇ!」


零れた涙を拭ってくれる人はいない。


ジュリエットの幸福な時間を奪われ、王宮に無理矢理連れていかれた。
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