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序章婚約破棄編
4すべて奪われて
しおりを挟む大事な着物に花嫁道具は奪われ、迷惑料だと言われ支度金まで返金してもらえなかった。
千春の不幸はそれにとどまらなかった。
奉公先のお城には暇を出されてしまったのだ。
「どうしてですか」
「噂は耳にしています。外聞が悪いから今日で辞めてくれる」
「許嫁に見放されたんだって…フラフラ遊び歩いているっていうじゃないか」
同じ女中仲間には軽蔑のまなざしを向けられ、これまで可愛がってくれた女中頭にも拒絶された。
他の女中仲間、小姓も視線すら合わせて貰えない。
屋敷に戻ろうにも、町を歩くとヒソヒソ囁かれて居心地が悪く。
市場に行くと。
「悪いけど、他を当たってくれ」
「店の評判にかかわるよ」
市場で買い物をしようにも売ってもらうことはできず。
橘家は手をまわしていることがすぐに解り、被害は千春だけでなく父、重定まで及んでしまった。
仕事を左遷されてしまったのだ。
「随分と用意周到だな」
「ええ…」
「そこまで怖いのか。なんと情けない」
婚約を破棄してすぐに落ち度は千春にあると触れ回り仕事先を解雇にして働き先を失くさせるだけでなく、重定の評判も悪くさせこの町から追い出すつもりなのか。
しかし左遷されても重定は解雇されたわけじゃない。
千春も仕事が外に内でだけ内職という手段があるのだから。
二人はこれまで様々な困難を乗り越えて来た。
逆境の耐える辛抱強さを持ち合わせていた。
「千春。縁談の事だが無理をしなくていい」
「でも、お父様」
「相手が誰であろうともお前が嫌なら断っていい。私は大丈夫だ」
重定は橘家のあまりにも非道な手段が許せなかった。
こんなこと許していいはずがないと思っていたが相手が相手なだけに簡単に断れない。
「相手は領主様の息のかかった方です」
「ああ、小姓をされているからな」
普通に断るのは無礼に値する。
その場合少し知恵を使わなくてはならない。
「色々噂の絶えない方だ」
「どんなに恐ろしい方なのですか」
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ただ、異能の姫を所望しているなら私は不要だろう。
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「うーん」
「やはり断った方が」
「嫁ぎます」
既に私に選択権はない。
もしかしたら気に入らないと言って拒絶されるかもしれない。
でも、このご時世政略結婚が当たり前。
個人の都合で断れないし、私を見れば落胆してしまうだろう。
きっとお飾り妻だろう。
それでもかまわない。
これ以上お父様に迷惑をかけたくないのだから。
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