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第一章伯爵家の見習い料理人
1.就職先は伯爵家
しおりを挟む急遽、リーシェの就職先が決まった。
当初はサルジオも頭を抱えていたのだが、貴族の邸で働く事を望んでいたので悩んだのだった。
「サルジオ殿、どうか難しく考えないで欲しい…いや、既に私にも後がないんだ!」
「カミュ様!」
頭を下げて頼むカミュ・ジャルディーノ。
伯爵位を持ち、家柄は大貴族出身だった。
「頭をお上げください!」
「もう、ヒルデガルドを任せられる者がおらず…この子は幼少期に両親を亡くしてしまって養女に迎えたのだが…侍女達と折り合いが悪く、私もどうして良いか解らず」
姉夫婦の娘を養女に迎えたカミュだったが、早くに両親を亡くした事を可哀想に思い我儘に育ててしまった事は否めないが、一部の侍女と衝突する事が多かった。
カミュは独身で、結婚する意志はなく。
ヒルデガルドを我が子として迎えたが、母親の愛情を与える事は出来ず、どう接して良いか困っていた。
「しかし、孫では…」
「ヒルデガルドの難題に笑顔で答え、尚且つヒルデガルドが嫌悪しなかった。彼女以外にはもう…」
「ですが、孫は平民です。ジャルディーノは大貴族です」
「我が家は家柄に拘らないから問題ない。残った料理長はもう高齢だ」
ぐいぐいと押してくるカミュに困り果てる。
「お嬢さん、もし引き受けてくれるならできる限りの事はさせてもらおう。君が宮廷料理人なりたいというなら紹介状に、料理人として学ぶ場も提供しよう」
「えっ…」
「君もいずれは料理人として王宮に行くならば、ある程度の肩書は必要だ」
カミュの誘いは魅力的だった。
しかし、今のリーシェに応えられるのかとも思った。
「私は礼儀作法もありません」
「君ならば学べば直ぐに習得できるだろう。私を助けると思って考えてくれないか」
無理強いはしないが、できれば来て欲しいと懇願される。
「リーシェ、好きにしなさい」
「お祖父ちゃん?」
「お前が選ぶんじゃ」
サルジュはリーシエの夢、願いを理解していた。
だからこそ、判断を任せることにした。
「料理人なるならば貴族の後ろ盾は必要じゃ」
「お祖父ちゃん」
「カミュ様は良き方じゃ」
サルジュの後押しもあり。
「行きます…行かせてください」
この町が好きだった。
だけど、料理人としての道を究めたい。
サルジュのような立派な料理人に沢山の人を笑顔にしたいのがリーシェの願いだった。
しかしリーシェは知らなかった。
カミュは貴族と言ったが貴族にも家柄が存在し、とんでもない身分であることを。
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