上 下
8 / 21
序章ヒロインの親友として転生

7故郷の味

しおりを挟む



ブライアン・アーガイル。
子爵家の三男でありながら身一つで出世を果した後に侍従長まで上り詰めた。

フットマンから家令にまで出世した後に第二王子殿下の教育係を任された。
数多の執事の教育係に携わった彼は鷹の目を持つ言われる程に人材を見抜くのに特化していた。


「お待たせしました」

「これは、アップルティー?」


最初に出すお茶ならば香りが良いアールグレイが多いのに対して何故と思った。


「私は甘いのは好かないのだが」


ブライアンはマナーとして出されたお茶を飲まないわけには行かないと思ったが。


「これは…」

「ルビーアップルで作ったお茶です」

上流階級では多くの紅茶が存在する中フルーツティーの中でアップルティーも存在するが林檎の生産が良くなく十年前とは異なり色が良く甘みの多い林檎を使っている。


ただし甘みの多すぎる林檎はお茶には合わないが、ルビーアップルを使うのは熟練の職人と調合師でないと難しかった。


「私が南部出身と知っていたのかね」

「上着のピンバッチを見て…」

「そうか」

ブライアンの故郷は南部で特産物は酸味の強い林檎だった。
故郷を忘れないように林檎のピンバッチをかつて恩のある主人から与えられていた。

そのピンバッチを今も大切にしていたのだ。


「年季の入ったピンバッチ。そして先ほどお聞きした質問の中に甘い物を好まず、またお茶に甘味料を入れる事を好まれていないと判断しました」

「そこまで…」

ブライアンは認めざるを得なかった。

「素晴らしい。して、それはケーキかな?」

「レモンパイです」

「ではいただけるか」

「はい」


レモンパイを切り分け二人に差し出す。


(素晴らしい人材だ)


故郷の味を思い出しながら懐かしい気持ちになる。
食べる事の喜びと、大拙な事を忘れていた気持ちを思い出す。

(そうだ、食べ物は美味しいだけではダメだった)

レモンパイを食べながらブライアンは一番大切な事を思い出す。

ルクシオンに食事をさせる為に最高の料理人を集め最高の食材を集めさせたが一番大切な事を忘れていた。


「私は何時の間にか忘れていたよ」

「ブライアン様…」

「そうだ。どんなに美味しくてもその人の食べたい物とは限らない」


幼い王子が欲していたのは一つだけだった。
何故葡萄パンと葡萄ジュースが美味しいと思ったか。


「美味い…本当に」

「お祖父ちゃん」

「今はそっとして差し上げなさい」


サルジュとリーシエは何も言わずお茶のお代わりを用意し見守った。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

長女は悪役、三女はヒロイン、次女の私はただのモブ

藤白
恋愛
前世は吉原美琴。普通の女子大生で日本人。 そんな私が転生したのは三人姉妹の侯爵家次女…なんと『Cage~あなたの腕の中で~』って言うヤンデレ系乙女ゲームの世界でした! どうにかしてこの目で乙女ゲームを見届け…って、このゲーム確か悪役令嬢とヒロインは異母姉妹で…私のお姉様と妹では!? えっ、ちょっと待った!それって、私が死んだ確執から姉妹仲が悪くなるんだよね…? 死にたくない!けど乙女ゲームは見たい! どうしよう! ◯閑話はちょいちょい挟みます ◯書きながらストーリーを考えているのでおかしいところがあれば教えてください! ◯11/20 名前の表記を少し変更 ◯11/24 [13] 罵りの言葉を少し変更

氷の騎士様が凍っておらず甘すぎる理由~騎士の妻が嫌だと駆け落ちしたのに今さら返せと言われても困ります!

ユウ
恋愛
連日徹夜、残業上等の職場で忙しさに明け暮れる喪女の天宮沙良は異世界に迷い込んでしまった。 しかも何故か氷の騎士の身代わり妻になることになってしまう。 相手は辺境伯爵家の三男で、第二騎士団隊長。 社交界の憧れの的。 貴族令嬢や未亡人からも睨まれ大ピンチの沙良は決意した。 「そうだ離婚しよう」 氷の騎士と離婚すべく悪妻を演じることにした。 しかし願いは空しくおかしな方向に進み、何故か計画はうまく進まなかった。 そんな最中婚約を逃げた本人が戻ってきて妻の座を返せと言い始めるが…。 タイトル変更しました!

チート過ぎるご令嬢、国外追放される

舘野寧依
恋愛
わたしはルーシエ・ローゼス公爵令嬢。 舞踏会の場で、男爵令嬢を虐めた罪とかで王太子様に婚約破棄、国外追放を命じられました。 国外追放されても別に困りませんし、この方と今後関わらなくてもいいのは嬉しい限りです! 喜んで国外追放されましょう。 ……ですが、わたしの周りの方達はそうは取らなかったようで……。どうか皆様穏便にお願い致します。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m

完璧令嬢が仮面を外す時

編端みどり
恋愛
※本編完結、番外編を更新中です。 冷たいけど完璧。それが王太子の婚約者であるマーガレットの評価。 ある日、婚約者の王太子に好きな人ができたから婚約を解消して欲しいと頼まれたマーガレットは、神妙に頷きながら内心ガッツポーズをしていた。 王太子は優しすぎて、マーガレットの好みではなかったからだ。 婚約を解消するには長い道のりが必要だが、自分を愛してくれない男と結婚するより良い。そう思っていたマーガレットに、身内枠だと思っていた男がストレートに告白してきた。 実はマーガレットは、恋愛小説が大好きだった。憧れていたが自分には無関係だと思っていた甘いシチュエーションにキャパオーバーするマーガレットと、意地悪そうな笑みを浮かべながら微笑む男。 彼はマーガレットの知らない所で、様々な策を練っていた。 マーガレットは彼の仕掛けた策を解明できるのか? 全24話 ※話数の番号ずれてました。教えて頂きありがとうございます! ※アルファポリス様と、カクヨム様に投稿しています。

モブですが、婚約者は私です。

伊月 慧
恋愛
 声高々に私の婚約者であられる王子様が婚約破棄を叫ぶ。隣に震える男爵令嬢を抱き寄せて。  婚約破棄されたのは同年代の令嬢をまとめる、アスラーナ。私の親友でもある。そんな彼女が目を丸めるのと同時に、私も目を丸めた。  待ってください。貴方の婚約者はアスラーナではなく、貴方がモブ認定している私です。 新しい風を吹かせてみたくなりました。 なんかよく有りそうな感じの話で申し訳ございません。

完璧な姉とその親友より劣る私は、出来損ないだと蔑まれた世界に長居し過ぎたようです。運命の人との幸せは、来世に持ち越します

珠宮さくら
恋愛
エウフェシア・メルクーリは誰もが羨む世界で、もっとも人々が羨む国で公爵令嬢として生きていた。そこにいるのは完璧な令嬢と言われる姉とその親友と見知った人たちばかり。 そこでエウフェシアは、ずっと出来損ないと蔑まれながら生きていた。心優しい完璧な姉だけが、唯一の味方だと思っていたが、それも違っていたようだ。 それどころか。その世界が、そもそも現実とは違うことをエウフェシアはすっかり忘れてしまったまま、何度もやり直し続けることになった。 さらに人の歪んだ想いに巻き込まれて、疲れ切ってしまって、運命の人との幸せな人生を満喫するなんて考えられなくなってしまい、先送りにすることを選択する日が来るとは思いもしなかった。

身内に裏切られた理由~夫に三行半を突きつけられたら姑が奇襲をかけて来ました!

ユウ
恋愛
家事に育児に義祖父母の介護。 日々の忙しさに追われながらもその日、その日を必死に生きて来た。 けれど、その裏で夫は他所に女を作り。 離婚を突きつけられ追い出されそうになったが、娘の親権だけは得ることができたので早々に家を出て二人暮らしを始めた。 ママ友が営む服飾店で働きながらも充実した日々を過ごしながらも、なんとか生活が成り立っていた。 そんなある日、別れた夫の姑が恐ろしい形相で乗り込んで来た。 背後には元夫の実家の顧問弁護士も一緒で、私は娘を奪われるのだと覚悟をしたのだったが…。

処理中です...