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序章ヒロインの親友として転生
7故郷の味
しおりを挟むブライアン・アーガイル。
子爵家の三男でありながら身一つで出世を果した後に侍従長まで上り詰めた。
フットマンから家令にまで出世した後に第二王子殿下の教育係を任された。
数多の執事の教育係に携わった彼は鷹の目を持つ言われる程に人材を見抜くのに特化していた。
「お待たせしました」
「これは、アップルティー?」
最初に出すお茶ならば香りが良いアールグレイが多いのに対して何故と思った。
「私は甘いのは好かないのだが」
ブライアンはマナーとして出されたお茶を飲まないわけには行かないと思ったが。
「これは…」
「ルビーアップルで作ったお茶です」
上流階級では多くの紅茶が存在する中フルーツティーの中でアップルティーも存在するが林檎の生産が良くなく十年前とは異なり色が良く甘みの多い林檎を使っている。
ただし甘みの多すぎる林檎はお茶には合わないが、ルビーアップルを使うのは熟練の職人と調合師でないと難しかった。
「私が南部出身と知っていたのかね」
「上着のピンバッチを見て…」
「そうか」
ブライアンの故郷は南部で特産物は酸味の強い林檎だった。
故郷を忘れないように林檎のピンバッチをかつて恩のある主人から与えられていた。
そのピンバッチを今も大切にしていたのだ。
「年季の入ったピンバッチ。そして先ほどお聞きした質問の中に甘い物を好まず、またお茶に甘味料を入れる事を好まれていないと判断しました」
「そこまで…」
ブライアンは認めざるを得なかった。
「素晴らしい。して、それはケーキかな?」
「レモンパイです」
「ではいただけるか」
「はい」
レモンパイを切り分け二人に差し出す。
(素晴らしい人材だ)
故郷の味を思い出しながら懐かしい気持ちになる。
食べる事の喜びと、大拙な事を忘れていた気持ちを思い出す。
(そうだ、食べ物は美味しいだけではダメだった)
レモンパイを食べながらブライアンは一番大切な事を思い出す。
ルクシオンに食事をさせる為に最高の料理人を集め最高の食材を集めさせたが一番大切な事を忘れていた。
「私は何時の間にか忘れていたよ」
「ブライアン様…」
「そうだ。どんなに美味しくてもその人の食べたい物とは限らない」
幼い王子が欲していたのは一つだけだった。
何故葡萄パンと葡萄ジュースが美味しいと思ったか。
「美味い…本当に」
「お祖父ちゃん」
「今はそっとして差し上げなさい」
サルジュとリーシエは何も言わずお茶のお代わりを用意し見守った。
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