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序章婚約破棄と追放
7聖女
しおりを挟む王宮の近くにある神殿。
そこは男子禁制の場となり許可がなければ国王陛下ですら入る事は許されていなかった。
その神殿の一番奥で少女は一人祈りを捧げていた。
「聖女様、お休みください」
「いいえ」
天に祈りを捧げる少女、リリーは昼夜問わずに祈りを捧げていた。
彼女は光魔法という特殊な力を持ち、祈りを捧げることで結界を敷くことができる。
代々聖女は女神より力を与えられ、魔を封じる力を与えられている。
国に魔がはびこる時に聖女が選ばれる。
他の貴族に利用されないように王族と、それに連なる貴族が彼女の後見人となる。
すべての役割を得た後に聖女として象徴になるか、元の生活に戻るか二つに一つだった。
リリーは平民で慎ましやかな生活を送っていた。
光の魔力が目覚めるまでは普通の少女で平穏な暮らしを送っていた。
だが、ある日光の魔力に目覚めてしまってから平凡な幸せは消えてしまった。
両親は魔力を一切持っておらず村では腫物を触れる様な目で見られた。
両親はリリーは何も変わらないと言うが村は持ち上げ聖女が誕生したと騒ぎだす。
静かに生活したいリリー達は特別な力ゆえに平凡な幸せは奪われ、ある日王家の使者がリリーを迎えに来た。
聖女候補として王宮に召し上げに来たと。
当初は嫌がったが、村の皆が持ち上げ、断れない状態になり泣く泣くリリーは王宮に向かったが。
貴族ばかりの中に投げ込まれ、孤独な日々だった。
聖女としての修行は厳しく、平民であるリリーは馬鹿にされ冷たい言葉を投げかけられる日々が続くも、両親の為にも懸命に励んだが、心が折れそうになった。
もう帰りたい。
「お父さん…お母さん」
両親を恋しがるあまり聖女の修行が上手く行かず、失敗続きでついにはふさぎ込んでしまった頃。
部屋に花が飾られていた。
「これは…」
リリーの故郷に咲いている花だった。
「白い百合だわ」
花の中で一番好きな百合の花に心を救われ。
それから毎日のように種類の違う百合の花や白い薔薇が飾られていた。
そしてもう一輪、リリーを勇気づけたのがカミツレの花だった
花言葉は苦難の中の力だった。
誰かは解らないがリリーはこの花を送ってくれた人に感謝していた。
辛い時、悲しい時に花に慰められて来た。
なのに、こんな事になるとは思わなかった。
「ごめんなさい…オンディーヌ様」
涙を流しながら懺悔する日々を送りながら祈っていた。
「私は貴女をあんな…」
救ってくれた優しい友人をあんな目に合わせてしまった。
「私は恩を仇で返すような真似を」
あの時の光景が頭から離れなかった。
雷撃で痛みに耐える姿が。
婚約者に非道な行いをしながら笑っていたキャスティが。
平民のリリーが王族であるキャスティに逆らえるはずもなく。
後悔ばかりの日々の中、リリーは聖女の力で助ける為だった。
「ならば私は!」
そして皮肉にもその決意と強い思いが真の聖女として目覚めるきっかけになったのだった。
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