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父
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顔をしかめたセルジオは現れた。
「お父様!」
カテリーナは味方が現れたと思いニヤリと笑った。
(いい気味だわ)
公衆の面前でアレーシャを叩きだしてやろうと思った。
そうすればレオンハルトも自分の物になるはずだ。
「アレーシャ!お前って子は、どこまで伯爵家の名に泥を塗ったら気が済むのかしら」
ルクレチアが扇をかざしながら蔑む。
この騒動は全てアレーシャが悪いと言い放ち責任を押し付ける。
「第一、お前がこのよう場に来ることは許した覚えはありません。分不相応の装いをして」
「分不相応だと?」
セルジオがルクレチアを睨む。
「貴族の令嬢が社交の場に出ることの何がおかしい?」
「旦那様?」
「それに宮廷からの招待状を受けている。お前は何時から国王陛下に意見できるほど偉くなったのだ」
「そんな!」
ルクレチアの言い分は国王陛下の命に逆らうとも受け取られる。
「私の娘がデビュタントするのがそこまで気に入らないのか」
「旦那様、何を……」
「アレーシャがデビュタントできなかったのは、お役目故。本来ならばもっと早く華々しくプライム家の長女としてデビューする予定だったと言うのに」
「お父様…何を言っているの?」
これまでカテリーナは姉が社交界デビューしないとばかり思っていた。
プライム家の令嬢は自分だけ。
役割も果てせない姉は出来損ないで引き立て役だと思い込んでいた。
「姉のデビュタントで騒ぎを起こすなど。恥さらしもいい所だ」
氷のように冷たい視線を向けるセルジオに二人は言葉を失った。
今まで何も文句を言わなかった。
なのにどうして?と思った。
(どうして…お父様はアレーシャを庇うの!)
なんでも買い与えてくれた父。
愛情を独り占めしていて我儘を言っても許してくれていた。
愛されているのは自分だけと思っていたが、セルジオがアレーシャを見る目はとても優しくて嫉妬を抱く。
「本来ならば16でデビュタントだったのだが…」
「お父様、侍女として宮仕えをできたことは私の将来の武器になります。勉強をさせていただいたと思っております」
「アレーシャ…」
セルジオの心の中は罪悪感でいっぱいだった。
領地で仕事にかかりきりだったなど言い訳にならない。
邸にあまり戻らなかった所為でアレーシャがどれだけ辛い思いをしたか解らない。
今回の騒動を聞いて本当の意味ですべてを知った。
「カテリーナ。お前を好きにさせ過ぎた私とルクレチアの落ち度だ。気品ある振る舞いをするように」
「どうしてお父様!!」
「侯爵家に嫁ぐ以上気品を身に着け両家に泥を塗るような真似をするんじゃない」
厳しい言葉を言い放つ中、一人の青年が現れる。
「プライム伯爵。どうされましたか?」
「エリック様。申し訳ありません。カテリーナが少々粗相を」
グランツ侯爵家次男エリックが現れる。
「粗相ですか…伯爵そちらの美しい方は」
エリックはアレーシャに見惚れる。
「お久しゅうございますわ。エリック様」
「まさかアレーシャか?」
「はい」
淑女らしく挨拶をするアレーシャに驚く。
「今宵はアレーシャのデビュタントです」
「そうでしたか。それにしてもお美しい…」
ポーっと見惚れるエリックに対してカテリーナは腸が煮えくり返る思いだった。
(何で…何で!!)
誰もがアレーシャに見惚れこのホールで主役のようだった。
これまでお姫様気取りだったのに立場が逆転してしまった。
「カテリーナ。父が呼んでいる」
「え?」
「パートナーの君がいないと話にならないだろう?」
「えっ‥‥ええ」
内心で舌打ちをする。
エリックがいる以上これ以上は無理だと判断し大人しくすることにした。
「旦那様…」
「行くぞ。これ以上恥ずかしい真似をするな」
「っ!!」
ルクレチアに命じその場を去ることになり。
「俺達も行こうか。反撃開始だ」
「はい」
舞台は本番に近づいていた。
「お父様!」
カテリーナは味方が現れたと思いニヤリと笑った。
(いい気味だわ)
公衆の面前でアレーシャを叩きだしてやろうと思った。
そうすればレオンハルトも自分の物になるはずだ。
「アレーシャ!お前って子は、どこまで伯爵家の名に泥を塗ったら気が済むのかしら」
ルクレチアが扇をかざしながら蔑む。
この騒動は全てアレーシャが悪いと言い放ち責任を押し付ける。
「第一、お前がこのよう場に来ることは許した覚えはありません。分不相応の装いをして」
「分不相応だと?」
セルジオがルクレチアを睨む。
「貴族の令嬢が社交の場に出ることの何がおかしい?」
「旦那様?」
「それに宮廷からの招待状を受けている。お前は何時から国王陛下に意見できるほど偉くなったのだ」
「そんな!」
ルクレチアの言い分は国王陛下の命に逆らうとも受け取られる。
「私の娘がデビュタントするのがそこまで気に入らないのか」
「旦那様、何を……」
「アレーシャがデビュタントできなかったのは、お役目故。本来ならばもっと早く華々しくプライム家の長女としてデビューする予定だったと言うのに」
「お父様…何を言っているの?」
これまでカテリーナは姉が社交界デビューしないとばかり思っていた。
プライム家の令嬢は自分だけ。
役割も果てせない姉は出来損ないで引き立て役だと思い込んでいた。
「姉のデビュタントで騒ぎを起こすなど。恥さらしもいい所だ」
氷のように冷たい視線を向けるセルジオに二人は言葉を失った。
今まで何も文句を言わなかった。
なのにどうして?と思った。
(どうして…お父様はアレーシャを庇うの!)
なんでも買い与えてくれた父。
愛情を独り占めしていて我儘を言っても許してくれていた。
愛されているのは自分だけと思っていたが、セルジオがアレーシャを見る目はとても優しくて嫉妬を抱く。
「本来ならば16でデビュタントだったのだが…」
「お父様、侍女として宮仕えをできたことは私の将来の武器になります。勉強をさせていただいたと思っております」
「アレーシャ…」
セルジオの心の中は罪悪感でいっぱいだった。
領地で仕事にかかりきりだったなど言い訳にならない。
邸にあまり戻らなかった所為でアレーシャがどれだけ辛い思いをしたか解らない。
今回の騒動を聞いて本当の意味ですべてを知った。
「カテリーナ。お前を好きにさせ過ぎた私とルクレチアの落ち度だ。気品ある振る舞いをするように」
「どうしてお父様!!」
「侯爵家に嫁ぐ以上気品を身に着け両家に泥を塗るような真似をするんじゃない」
厳しい言葉を言い放つ中、一人の青年が現れる。
「プライム伯爵。どうされましたか?」
「エリック様。申し訳ありません。カテリーナが少々粗相を」
グランツ侯爵家次男エリックが現れる。
「粗相ですか…伯爵そちらの美しい方は」
エリックはアレーシャに見惚れる。
「お久しゅうございますわ。エリック様」
「まさかアレーシャか?」
「はい」
淑女らしく挨拶をするアレーシャに驚く。
「今宵はアレーシャのデビュタントです」
「そうでしたか。それにしてもお美しい…」
ポーっと見惚れるエリックに対してカテリーナは腸が煮えくり返る思いだった。
(何で…何で!!)
誰もがアレーシャに見惚れこのホールで主役のようだった。
これまでお姫様気取りだったのに立場が逆転してしまった。
「カテリーナ。父が呼んでいる」
「え?」
「パートナーの君がいないと話にならないだろう?」
「えっ‥‥ええ」
内心で舌打ちをする。
エリックがいる以上これ以上は無理だと判断し大人しくすることにした。
「旦那様…」
「行くぞ。これ以上恥ずかしい真似をするな」
「っ!!」
ルクレチアに命じその場を去ることになり。
「俺達も行こうか。反撃開始だ」
「はい」
舞台は本番に近づいていた。
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