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秘めた想い
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アレンゼル王国の現国王陛下は王妃の子ではなく側室の子だった。
当時王妃よりも側室が先に子供を生み、王子だったことで宮廷内では騒動が起きた。
側室が王子を産んだことで王太子として将来を約束されるかと思いきや、数年後王妃が王子を出産、その数年後にまた王子を出産した。
そこで王位継承権を巡って争いが起きた。
当時王太子に望まれたのがレオンハルトだったが幼少期から聡明で争い事を好まない性格だった。
故にレオンハルトは王太子の座を兄に譲った。
だがその後も、権力を欲する貴族はレオンハルトに近づき言葉巧みに王太子の座を奪い返すように囁く。
レオンハルトは正義感が強く優しい性格故に血の繋がった兄弟で骨肉の争いはしたくなかった。
そうでなくとも母親が側室というだけで責められている兄を見るのは居たたまれず憂鬱な日々を送っていたある日。
精神的に滅入っているレオンハルトの乳母の店に遊びに行った。
そこで偶然出会った幼い令嬢が幼き頃のアレーシャだった。
「ごきげんよう」
優しく笑う少女にレオンハルトは一目惚れをした。
白銀の髪に紫の瞳は天使のようだと思った。
宮廷での暮らしはとても窮屈で憂鬱だったが、アレーシャといると心が癒された。
活発なレオンハルトは反対にアレーシャは本が好きで知識が豊富だったことで互いに足りないモノを補うことができた。
オパールに通うようになってしばらくして。
アレーシャの母、ユスティーナが病気で亡くなり父親が再婚することになったと告げられた。
意気消沈するアレーシャにレオンハルトは慰めの言葉もかけられなかった。
王子と言えどまだ無力なことでもで何もできないレオンハルトにタイミング悪く留学の話が舞い込んだ。
後に兄が王となれば補佐をするために勉強しなくてはならない。
セラフィーヌの命だったので逆らうことも叶わず国を離れなくてはならなくなった。
「アレーシャ…俺は国を出ることになった」
「‥‥いなくなるんですか」
泣きそうなアレーシャにレオンハルトは身が裂かれる思いだった。
「待ってて」
「え?」
「必ず迎えにい来るから。時間がかかるとかもしれない。でも絶対迎えに来るから待っていて」
この身一つでアレーシャを守れる男になって迎えに来る。
そう約束し、身に着けているペンダントを渡した。
「必ず迎えに来る。絶対に」
誰からも認められる男になって。
強くなって戻ってくると約束し国を出た。
だがその願いは無残に打ち砕かれる結果になった。
グランツ侯爵家とプライム伯爵家の縁談話が持ち上がった。
国王陛下の命で執り行われた縁談を止める術がなかったレオンハルトは諦めるしかなかった。
それでも心の奥底に想いを秘めながら戦場を駆ける内に英雄と呼ばれるようにまでなり若くして北の最強の騎士とまで呼ばれるようになった。
せめて遠くから愛しい人の幸せを願おうと心に決めたのだった。
当時王妃よりも側室が先に子供を生み、王子だったことで宮廷内では騒動が起きた。
側室が王子を産んだことで王太子として将来を約束されるかと思いきや、数年後王妃が王子を出産、その数年後にまた王子を出産した。
そこで王位継承権を巡って争いが起きた。
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故にレオンハルトは王太子の座を兄に譲った。
だがその後も、権力を欲する貴族はレオンハルトに近づき言葉巧みに王太子の座を奪い返すように囁く。
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後に兄が王となれば補佐をするために勉強しなくてはならない。
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「待ってて」
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この身一つでアレーシャを守れる男になって迎えに来る。
そう約束し、身に着けているペンダントを渡した。
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それでも心の奥底に想いを秘めながら戦場を駆ける内に英雄と呼ばれるようにまでなり若くして北の最強の騎士とまで呼ばれるようになった。
せめて遠くから愛しい人の幸せを願おうと心に決めたのだった。
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