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第四章未来への扉
24.隠密行動
しおりを挟む真っ暗な世界の中で声が聞こえた。
ここは何処?
「起きろ主…」
声が聞こえ、目の前には聖虎がいた。
「無事だったようだな。作戦は成功した」
「作戦…そうだわ」
私の部屋に来た侍従をの姿を装ったあの男がノーチェスト公爵家の侍従でない事には気づきわざとついて行った。
そしておかしな術をかけられたけど、寸前の所で術を拒絶した。
勿論、術にかけられた振りをしながらあの男に投げ飛ばされる振りをして咄嗟にすぐそばの窓に飛び移った。
「主に似せた体を幻術で作ったからしばらくはバレないだろう」
「ありがとう」
離れていても聖獣と私は繋がっている。
私の危機を察して駆けつけてくれたおかげで助かった。
「主はあの塔から落ちて死んだと思っているだろう…これからどうするのだ」
「マリアが心配だわ、このまま助けに行きます」
他の人にもこっそり伝えた方が良いけど。
「ならば聖蝶を使えばいい、主の魔力ならできるだろう…隠密に伝達ができるはずだ」
聖蝶とはその名の通り聖なる蝶で、聖魔法を使って生み出すもの。
通常の風の魔法を使って手紙を送るのとは異なり蝶が伝えてくれる。
「お願い聖蝶、ジルベルト様達に伝えて」
「よし、なんとか飛んだぞ」
「ええ、私達はあそこへ…マリアも囚われているはずだわ」
私を殺そうとしたのであれば聖女であるマリアも始末するはず。
そして私達を邪魔に思っている人間は、十数年前から陰で動いていた人間。
「私が洗礼式で間違った鑑定をされた時からずっと、陰で動いていた人間がいる…マリアナをも操り続けていた人間が」
「ああ…嫌な匂いがする。我らと相反する邪悪な気だ」
急がないと手遅れになってしまう気がする。
「マリアの魔力を辿ることはできる?」
「ああ、問題ない。聖女と巫女は切っても切れない縁があるからな」
「じゃあ、急ぎましょう」
私は聖虎の背に乗って塔のへ向かった。
「くっ、飛ぶぞ」
「えっ…何!」
黒い風が、私達に襲い掛かって来た。
「この風は、あの時と似ている」
マリアナの魔力が暴走した時に出た風。
「この風は黒い風だ…黒い妖精と呼ばれる」
「黒い妖精?」
「普通の妖精とは違い悪しき心を吸いつくした妖精だ。奴らは人間の悪意を糧に大きくなる」
そんな妖精がいたなんて知らなかった。
でも、どうしてそんな妖精が生まれたのか。
「元は普通の妖精だったが、使役する人間が欲深すぎたせいで悪しき心を持ってしまった。悪の心を吸い過ぎたことにより、主を食らい続けたのだろう…だが、巫女と聖女に封印されたはずだが」
「まさか、誰かがその封印を…」
「封印が緩んでいた可能性は考えられるが、これほどの悪意を食うには時間はかかるはずだ」
先代巫女が封印してから長い月日が過ぎても、黒い精霊が自我を保つまで何百年の時間がかかるので不可能だと知らされる。
一体どうして?
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